コラム

トランプの命運を握るのは、米議会選より州知事選

2018年11月03日(土)13時40分

フロリダ州知事選で民主党のギラムが勝てばトランプには大きな痛手に Wilfredo Lee-REUTERS

<中間選挙で米議会の構成が変わっても弾劾罷免はあり得ない......2年後の大統領選に影響する州知事選のほうが重要だ>

11月6日の中間選挙を前に、メディアは議会選の情勢分析に忙しい。もし民主党が下院の過半数を獲得すれば、トランプ大統領が早々に弾劾訴追される可能性もある(最終的に大統領を罷免するには、さらに上院で3分の2以上の賛成が必要)。

しかし、トランプの政治的運命を予測したければ、議会選と同時に行われる州知事選に注目したほうがいい。今回は50州中36州で知事選が行われる。州知事選の結果から、いくつかの重要なことが見えてくる。

1つは、激戦州の行政トップの選挙戦でトランプ人気がどの程度有効かという点だ。トランプが2年後の大統領選で再選を果たすためには、フロリダ州とジョージア州での勝利が欠かせない。知事選の結果は、20年の大統領選でトランプの得票を占う材料になるだろう。

フロリダ州知事選では、同州初の黒人知事を目指す民主党のアンドリュー・ギラムが、トランプ支持を前面に押し出す共和党のロン・デサンティスをリードしている。伝統的に共和党が強いジョージア州では、民主党のステイシー・エイブラムスが優勢だ。エイブラムスが勝った場合は、アメリカで初の黒人女性知事が誕生する。

この2つの州で民主党候補が当選すれば、トランプにとってはかなり悪いニュースだ。

民主党は結束できるか

今回の州知事選は、20年に民主党が一致結束してホワイトハウス奪還を目指せるかを予測する手掛かりにもなる。

20年の大統領選では、ロシア疑惑捜査の展開次第という側面もあるが、現時点ではトランプが再選される可能性のほうが高いとみられている。民主党が一枚岩になれないという見方が強いこともその一因だ。

前回の大統領選では、この問題が民主党を苦しめた。予備選でクリントン元国務長官とサンダース上院議員が激しくぶつかり合い、クリントンが党の大統領候補に決まった後も亀裂が修復されなかった。サンダースの支持者は、本選挙でクリントンに投票しないケースもあった。

しかし、ミシガン州知事選の動向を見るかぎり、16年の二の舞いは避けられるかもしれない。今年8月の同州知事選の民主党予備選では、サンダース流の選挙戦を展開したムスリム系のアブドル・エルサイードが、クリントン流の主張を掲げるグレッチェン・ウィトマーを激しく攻撃した。しかし、ウィトマーの勝利が決まると、エルサイードは直ちに支持を表明した(公正のために情報を開示しておこう。エルサイードは私の友人の1人だ)。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

メキシコ大統領「即時報復せず」、米の鉄鋼・アルミ関

ワールド

欧州5カ国の国防相が会談、防衛力強化やウクライナ安

ビジネス

カナダ中銀0.25%利下げ、トランプ関税で「新たな

ワールド

EUの関税、蒸留酒業界に「壊滅的な結果」=業界団体
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    株価下落、政権幹部不和......いきなり吹き始めたト…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    トランプ第2期政権は支離滅裂で同盟国に無礼で中国の…
  • 8
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎…
  • 9
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 10
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story