コラム

首都圏郊外の意外な場所で中古マンションが値上がりしている。物流センターを中心としたニュータウン誕生の前兆か?

2022年10月04日(火)12時31分

かつて、高速道路に近い場所は嫌われたものだが……(写真はイメージ) kokouu-iStock.

<次の有望住宅地を占う中古マンション価格が上がっているのは、圏央道を利用しやすい場所であり、ゆえに巨大物流施設が多い場所だった。不動産会社も開発に乗り出しており、物流施設を核とした街づくりが行われるかもしれない>

この1年、全国で最も中古マンション価格が上がったと推測されるのは神奈川県の相模原市中央区で、上昇率はじつに41パーセント。1.4倍に値上がりしていた。

以下、全国で中古マンション価格が大きく上がった市区町村は、神戸市垂水区、神奈川県茅ヶ崎市、埼玉県川越市、東京都八王子市と続く。共通するのは、中心部から離れた郊外部。そこから、テレワークの広がりで、郊外の住宅地が人気上昇した結果、との見方も生じそうだ。

が、郊外で環境のよい住宅地で中古マンション人気が上がっているなら、湘南エリアの藤沢市や平塚市は茅ヶ崎市とともに中古マンション価格の上昇率が高くなってよいはず。ところが、藤沢市は上昇率14.08パーセントで全国36位、平塚市は同9.39パーセントで77位と差が付いている。

藤沢市と平塚市を抑えて、茅ヶ崎市が全国3位の価格上昇率になっている理由は何か。

そもそも、相模原市中央区が全国1位の価格上昇率になっているのはどうして?

都心への通勤利便性や買物の便利さ、そして将来の値上がり期待度といった従来の尺度とは異なる、新しい評価軸が出現したためか。

そんな考えから、中古マンション価格上昇率10位までの地域から、共通要素を探し出した。

今回利用したデータは、「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインド社が9月22日に発表した「2022年8月 全国市区町村 中古マンション価格/騰落率ランキング100」である。

中古マンション価格が上がった10箇所に共通するのは......

「2022年8月 全国市区町村 中古マンション価格/騰落率ランキング100」は、マンション情報サイト「マンションレビュー」の保有データを元に、昨年8月と今年8月の全国中古マンション価格を比較。エリアごとの中古マンション価格(70平米換算)と1年間の騰落率をまとめている。

そのデータで、1年前と比べて中古マンション価格が大きく上がったと推測される市区町村・ベスト10は以下のとおりだ。

1位 神奈川県相模原市中央区

2位 兵庫県神戸市垂水区

3位 神奈川県茅ヶ崎市

4位 埼玉県川越市

5位 東京都八王子市

6位 東京都府中市

7位 千葉県松戸市

8位 岐阜県岐阜市

9位 千葉県八千代市

10位 東京都青梅市

以上の場所に共通するのは、前述したとおり「郊外地域」であること。それ以外で共通する要素はないか。考えを巡らせると、1つの要素が浮かび上がってきた。

それは、「高速道路・バイパスの出入り口が近い」。つまり、高速道路を利用しやすい場所であることだ。

相模原市中央区では、巨大物流施設が続々オープン

上昇率ベスト10の場所それぞれの上昇率と2022年8月の中古マンション価格・2021年8月の中古マンション価格、そして、利用しやすい高速道路・バイパス名をまとめてみたのが、以下の表だ。

sakurai20221003162601.jpg
表はワンノブアカインド社データを基に、最寄りの高速道路・バイパスを加えて筆者が作成。表中の「価格」は、70平米換算の中古マンション価格となっている。「圏央道」の正式名称は、「首都圏中央連絡自動車道」

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story