SDR狙いで進む?中国の金融自由化
金融緩和や預金金利自由化でIMFに秋波を送る中国人民銀行 Petar Kujundzic-REUTERS
中国人民銀行(中央銀行)は追加金融緩和と預金金利の自由化を実施しました。前者は景気対策であり、後者は金融改革と位置付けられています。預金金利自由化の歩みは2014年11月以降スピードアップしました。2015年8月11日の人民元対米ドル基準レートの算出方法の変更と併せて、その根底には、中国が熱望する人民元のSDR(特別引出権)採用に向けたIMF(国際通貨基金)に対するアピールがあったと見ています。
中国人民銀行は10月24日、追加金融緩和を実施しました。1年物貸出基準金利は0.25%引き下げ4.35%に、1年物預金基準金利は0.25%引き下げ1.50%としました。利下げは2014年11月以降6回目です。金融機関の預金準備率は0.5%引き下げられ、大手行の預金準備率は17.5%となりました。
中国人民銀行は、今回の利下げは景気下振れリスクと物価下落を考慮したとしています。7月~9月の実質GDP成長率は前年同期比6.9%と6年半ぶりに7%を下回り、1月~9月のGDPデフレーターは同0.3%のマイナスでした。このタイミングでの追加緩和は、景気減速が続くなか、中国共産党中央委員会の重要会議である五中全会(10月26日~29日)を前に、中国政府として打てる手を打っていることをアピールする狙いもあったのだろうと考えています。
預金金利の自由化は一応完了
預金準備率引き下げは市場への資金供給が目的です。外国為替資金残高は、中国人民銀行が市中銀行の外貨を購入し、見合いの人民元を供給した金額の残高です。2014年後半以降、外国為替資金残高は純減となることが多く、2015年8月は7,238億元(約1,133億米ドル)、9月は7,613億元(約1,197億米ドル)もの純減となりました。外国為替市場で大規模な元買い・ドル売り介入が実施されていることが主因の一つでしょう。当局が何もしなければ金融引き締めとなり、中国人民銀行はオペなどを通じて金融市場に資金供給を行っていますが、長期資金の供給には、預金準備率引き下げが有効な手段となります。大手行の預金準備率は引き下げ後も高水準であり、追加引き下げ余地は依然として大きいとみています。
さらに、今回は金融機関の預金金利上限が撤廃されたことが特筆されます。貸出金利は2013年7月に自由化されましたので、これで預金金利の自由化も一応完了したことになります。
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