コラム

内紛続く米民主党、震源地はニューヨーク

2025年03月26日(水)20時30分

市長選への闘志満々のクオモ前ニューヨーク州知事 Lev Radin/ZUMA Press Wire/REUTERS

<党内左派と穏健派が予算審議で対立、秋のニューヨーク市長選では現職と前州知事が対決?>

5月初旬には第2次トランプ政権が発足100日を迎えます。慣例によって、「最初の100日」はメディアも野党も批判を控える傾向がありますが、この日を過ぎれば一気に反転攻勢に出るのが通例です。ところが、現在のところ野党である民主党にはその勢いがありません。

昨年11月の大統領選、上院選、下院選で敗北したショックから立ち直っていないということもありますが、それ以上に問題なのは党の内部に内紛を抱えていることです。その1つが民主党上院議員団の動向です。


民主党の議員団は、トランプ政権の人事などについては、不適格だと思うと反対するなど結束して行動してきました。ところが、この3月上旬に行われた予算審議では、割れてしまったのです。

下院のジョンソン議長(共和)が調停した妥協案が可決されるかどうかが、焦点となっていました。可決されないと、政府閉鎖となって連邦政府の機能が止まってしまいます。これに対して、左派のバーニー・サンダース議員などは「否決して政府閉鎖が実現した方が、政権に打撃を与えることができる」としていました。

政府閉鎖は回避

ところが、上院民主党議員団のボスであるチャック・シューマー院内総務は、一部の穏健派と一緒に共和党議員団に同調して予算可決に動いたのです。政権が連邦制府組織にリストラを迫っており、既に混乱している中では政府閉鎖に追い込むのは不適切、などの理由でした。その結果、政府閉鎖は回避されました。

党内の左派は、これに対して怒っており、一部からは「院内総務のシューマー議員を引きずり下ろせ」という声が出ています。具体的には、次回の2026年中間選挙で改選を迎えるシューマー議員に対して、AOCことアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員を擁立して、シューマー氏の政治生命を奪おうというのです。

AOC議員はまだ態度を鮮明にしていませんが、仮にシューマー氏とAOCが来年のニューヨーク州選出上院議員候補の予備選で激突するようなことになると、党内情勢は相当に混迷する可能性があります。

ニューヨークでは、その前に今年2025年11月に市長選挙があります。こちらは既に予備選の前哨戦が激しくなっていますが、やはり民主党内は激しく分裂しています。まず、現職のエリック・アダムス市長は、汚職疑惑を不起訴としてもらう代わりに、不法移民摘発に協力するとして、トランプ政権と手を組んでいます。民主党としては許せない裏切りですが、現時点では市長を罷免に追い込むことはできていません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米経済のハードデータは堅調、関税の影響を懸念=シカ

ビジネス

相互関税「即時発効」と米政権、トランプ氏が2日発表

ビジネス

TikTok米事業、アンドリーセン・ホロヴィッツが

ワールド

米・エジプト首脳が電話会談、ガザ問題など協議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story