コラム

日本の安倍政権と同様に、トランプを支えるのは生活に余裕がある「保守浮動票」

2024年10月30日(水)10時30分

2016年の選挙、2020年の選挙では、退潮が著しかった共和党の基礎票に大幅な上乗せをして、トランプ氏は7000万票前後という空前の集票を行いました。この票は、共和党の議員たちの当選にも作用しており、結果的に共和党はトランプ氏に乗っ取られた格好となりました。

このトランプ氏の積み上げた票というのも、保守浮動票だと思います。左派を叩くことには興味があるが、生活や雇用の面では切迫感はない、そんな層です。2021年1月6日に高い航空券を買ってわざわざ首都に乗り込み、暴力行為で逮捕されて青ざめた会計士とか、今回のMSGイベントに観光気分で来て盛り上がっている層は、政治的行動に必然性や切迫感はないのです。カルチャー現象ではあっても、政治的運動ではないとも言えます。例えば大統領選の絡まない中間選挙では「寝てしまった」という現象はこれで説明できるのです。


ということは、11月5日に迫った大統領選では、投票率が大きく結果を左右すると見て良いと思います。現時点での天気予報は、激戦州と言われるウィスコンシン、ミシガン、そしてペンシルベニア西部の天候は「雨」です。この地域は完全にクルマ社会ですが、雨天ということになると多少は出足が鈍るかもしれません。

今回は共和党の方も事前投票や郵送投票を後押ししていましたが、過去2回はそうではありませんでした。当日の投票に期待するという面では、共和党のほうが大きいと考えて良いと思います。アメリカの場合も保守浮動票といって言える層があり、その票が積み上がるかどうかは投票率次第という見方が可能だと思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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