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大統領選でも引きずる米政治の「コロナ禍後遺症」
コロナ対策に「反対」した実績を訴えるデサンティス(写真は昨年7月31日) Andrew Cline/Shutterstock
<コロナ対策の政治的評価は、大統領選が始まった今でもアメリカ政治に影響を及ぼしている>
日本では、昨年9月に新型コロナの5類移行と同時に、政府の対策分科会などが解散し、これに合わせてコロナ禍への対策に注力していた専門家グループも退任しました。それから少し時間が経過し、現在はコロナ禍の期間中における政治と専門家の役割分担を振り返る段階に来ているようです。
これだけ長期に渡ったコロナ禍ですから、日本では政府の行動に関する再評価は必要だと思います。緊急事態宣言や、まん延防止宣言の効果とコストの検証をはじめ、菅義偉政権が五輪の無観客開催を受け入れた判断、2020年春の学校一斉休校騒動の評価、ワクチンや治療薬開発で国産が遅れたことへの反省など、様々な論点は残されたままです。
考えてみれば、コロナ専門家、つまり感染症の研究者の使命は、感染症から1人でも多くの人命を守ることです。これに対して、社会的、経済的な観点も加えたトータルで人命を守る最善手を提案するのは政治の仕事です。コロナ禍を通じて、国民全員に対して対策の負担の理解を求める仕事も政治の責任です。政治が、そうした責任を果たさず、専門家に国民との対話を委ねたことは無責任であり、この点の反省は欠かせません。さらに、コロナ禍初期に経済活動の停止や完全鎖国を主張した一部野党の反省も足りないと思います。
それはともかく、政局という観点からは、日本の場合はコロナ禍という問題はそろそろ「過去形」になってきました。ところが、アメリカでは今回の大統領選でもそうですが、政治がまだ「コロナ」を引きずっているところがあります。
ファウチ博士を罵倒するデサンティス
代表的なのは、今回のアイオワ党員集会(結果については、ほぼ想定内というのが多くのメディアの見方ですが)で辛くも2位に踏みとどまったフロリダ州のデサンティス知事です。デサンティスの自慢は、フロリダ州でコロナ対策を行ったのではなく、その反対を行ったという「実績」です。つまり、ワクチン接種やマスク着用といった対策を「強制するのを禁止」するという法律を制定し、併せてレストランやスポーツジム等の営業を早期に許可した、これが自分の全国に誇る実績だとしています。その上で、全国を「フロリダ化する」ために、自分は立候補しているという言い方もしています。
デサンティスは、トランプ、バイデンの両政権に仕えた専門家のアンソニー・ファウチ博士を「憲法違反の悪」だとして、今でも罵倒し続けていますし、こうした「アンチ対策」の姿勢が「自分こそ究極の自由の擁護者」だということを示していると胸を張っています。また、当時のトランプ政権が、ワクチンのスピード開発をやり、対策予算で財政を悪化させたとして、この点に関してはトランプ政権に「非がある」としています。
一方で民主党の側の「コロナ禍対策への評価」は正反対です。例えばバイデン大統領は、コロナ禍対策からポストコロナへの経済の回復、雇用の回復を主導したのは自分だとして胸を張っています。ただ、この経済の回復に向けて、余りにも積極的な資金投下を行ったことが、筋の悪いインフレの原因だということは、大統領には反省はないようです。
仮に民主党内で候補選びをやり直す場合は、真っ先に名前が上がるであろう、カリフォルニア州のニューサム知事の場合も同様です。ロックダウンを批判して共和党が起こしたリコール投票を一蹴したことも含めて、コロナ対策の実績が支持されているというのが、この知事の自負のようです。
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