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「No, thank you.」の消滅......アメリカは日本化しているのか?
デバイスがコミュニケーションを変化させる Tero Vesalainen/Shutterstock
<日本でもアメリカでも、ネットを介した短いコミュニケーションで関係性を悪化させないための知恵が必要に>
日本の若者がLINEなどのメッセージで「句点(。)」を一切使わないということが、話題になっています。句点無しの短い文章を区切りながら繰り出すことで、リアルタイムのコミュニケーションを取るためのようです。それが完全に定着する中で、句点を使うことが「威圧感、怒りの感情」の表現として受け取られるようにもなっているようです。
若い人たちに指摘されて気付いたのですが、実はこれはアメリカでも全く同じです。短いメッセージをどんどん繰り出してリアルタイムの交信をする場合には、ピリオド(フル・ストップとも言います)を使いません。反対に、あえてピリオドで切るとそこには「納得していない」という拒絶や怒りのニュアンスが感じられるといいます。
英語の場合は、少しバリエーションがあり。二人称の you について、いつもは「Y」などの略語で書いているのを「You」とフルのスペリングで書くと、同じように怒っているというニュアンスをつけることができます。絵文字もそうで、普段なら略語や絵文字を使う局面をキチンとした英語で書くと「かなり怒っているな」という感じになるわけです。
余りに一致した現象ということで、偶然とは思えません。ですが、句点やピリオドを省略して、クイックでソフトな印象を与えるということは、こうした「ショートメッセージ」に「ニュアンスをつける方法」としては自然で理にかなっています。ですから、日本語、英語の双方で自然発生的に生まれたのかもしれません。
日本語の「大丈夫です」に似たニュアンス
日本語と英語の表現が似通ってきたということでは、「No, thank you.」の消滅ということがあります。アメリカに限った話かもしれませんが、90年代からこの傾向はあり、どうしても言いたい場合は、「No, thank you very much.」という感じに丁寧表現を足して何とかするというような感覚がありました。
近年では、それもかなり消滅気味で、その代わりに断りの表現として、「I'm fine.」とか「I'm good.」が定着しています。この現象ですが、日本の若者言葉で同じように断りの表現が「いいえ、結構です」から「大丈夫です」に変化したのと、かなり似通っています。
違いと言えば、日本の場合は、若者の「大丈夫」が「イエス」なのか「ノー」なのか中高年には判別が難解と言われるように、この「No, thank you.」の意味の「大丈夫です」は、年齢的に若い世代が中心です。今回のコロナ明けぐらいから、それが中高年にも徐々に浸透しつつあるという感じかもしれません。
ですが、アメリカの場合の「No, thank you.」から「I'm fine.」への変化は、既にかなり広範な世代に普及しています。そうではあるのですが、明確な「No」を嫌うという変化の仕方がソックリで、全く別の言語における現象と考えると驚きです。
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