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広島サミットを迎える日本政府とメディアの「勘違い」には注意が必要

バイデンが出席できるかはまだまだ不透明 Everlyn Hockstein/REUTERS
<米大統領の被爆地訪問には、米保守派から批判が出ることも想定しておくべき>
広島G7サミットが近づいてきました。岸田首相にとっては、自分が首相になって地元の広島でサミットを開催するのは宿願であったと思います。広島の地から、自分が主導して核軍縮のメッセージを発信し、またロシアの核威嚇に対してG7が結束して反対することで、歴史に名を残すという狙いもあるでしょう。それだけでなく、国内の支持をより高めてあわよくば総選挙に打って出ようというのですから、相当な力が入っていることと思います。
熱意があるのは良いのですが、首相やその周辺、あるいは日本での報道の中で、G7に関する「勘違い」があるのは困ります。4点、気になることを確認したいと思います。
1点目はバイデン大統領の出席についてです。確かに大統領は自身の口から「参加する予定だ」と述べています。ジャンピエール報道官も「17日出発」と明言し、さらに18日には「日本の後の豪州訪問はキャンセルするが、G7には行く」としています。ですが、こうした発言だけを受けて、バイデンは「必ず来る」という断定的な報道を続けるのには慎重であるべきです。
というのは、アメリカにおける「債務上限問題」は未解決のままで、そんな中で、共和党との交渉を中断してG7に出るのが是か非かは、大統領としてギリギリの判断になるからです。万が一の「リモート参加」という可能性も、まだ完全には排除できないということは認識すべきです。「本当に来るまで」報道にはある種の慎重さが必要ですし、途中退席の可能性も想定しておいた方が良いと思います。
2点目は「おもてなし」です。G7会場の広島だけでなく、各分野のG7閣僚会議が全国各地で行われています。現地では、それぞれに土地の名産を振る舞って話題作りと町起こしに役立てようと、最大限の「饗応」をしているようです。そこには、この機会を逃すまいという必死さすら感じます。ですが、G7というのは実務の場です。そこで華美な接遇をするというのは、逆効果もあるということを知るべきです。
「過度」のおもてなしが批判を浴びた過去も
例えば、トランプ前大統領に、当時の安倍首相が「黄金のゴルフクラブ」を贈呈したことがあります。在日米軍の引き揚げとか、極端な保護主義政策などを「押し付けられる」危険を感じた安倍首相としては、「国難の回避」のために、知恵を絞ってプレゼントを選択したのは当然と思います。ですが、この「贈り物」は外国による不当な金品の贈与だと批判されて、後に返却されてしまっているのです。
レーガン大統領といえば、20世紀後半の大統領の中では、特に人気の高い大統領で、その葬儀が2004年に行われた際には、メディアは故人への賛辞一色となりました。ただ、その際に唯一の汚点だと言われたのが、当時の中曽根首相がレーガンを、個人の別邸「日の出山荘」に招いて一緒に座禅を組むなどの接遇をしたことでした。異教の宗教儀式を強要したということよりも、必要以上に華美な接遇という印象を持たれたのが理由です。
G7に関しては、2008年の洞爺湖サミットにおける配偶者プログラムで、首脳夫人を集めて「茶席」が設けられたことは、G7諸国などのメディアから批判を浴びました。配偶者プログラムが国際社会における問題解決など社会的な意味から離れた、まるで貴族の社交のようなことをしているとして叩かれたのです。今回の配偶者プログラムについては、岸田裕子夫人がジル・バイデン夫人と綿密な下打ち合わせをしていますので、そのような「失態」は起きないと信じています。
3点目は、原爆の問題です。アメリカの世論の中には、今でも悲惨な本土決戦を回避し、ソ連に対する軍事的優位を見せて東西対決を避けるために、核攻撃は不可避だったという意見があります。日本としては認められない考え方ですが、そうした意見があるのは否定できない事実です。それ以上に、大統領という国の代表が、外国に対して頭を下げることに怒りを感じる層もあります。
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