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もし山下達郎氏が、アメリカでサブスクを解禁すれば......
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確かにサブスクが音楽へのリスペクトに溢れているとは思えないが stockam/iStock.
<米音楽業界は、サブスクを楽曲紹介のツールとして割り切り、ライブやツアーでマネタイズするビジネスモデルになっている>
6月22日に久々のオリジナルアルバム『Softly』をリリースするミュージシャンの山下達郎氏は、サブスクは「おそらく一生やらない」と語っているそうです。サブスクとは、ストリーミングによる音楽を無制限に聴取できる会員制のサービスで、具体的にはApple Music、Amazon Music、Spotifyなどを指します。
今回の『Softly』も基本的には物理的なCDのディスクとビニールと言われるLPレコードでの発売になります。この「サブスク拒否」について、山下氏は、アルバムリリースに先駆けて、Yahoo Japanのインタビューに応じて、次のように語っています。
「だって、表現に携わっていない人間が自由に曲をばらまいて、そのもうけを取ってるんだもの。それはマーケットとしての勝利で、音楽的な勝利と関係ない。本来、音楽はそういうことを考えないで作らなきゃいけないのに」
サブスクに対する明確な拒否宣言ですが、ミュージシャンとして、アーティストとして筋を通しているのは事実だと思います。そのような姿勢を堅持し、またメッセージとしてぶれずに発信し続けている姿勢は、アーティストとして一流の証明でもあると思います。
その一方で、仮にニューアルバム『Softly』のリリースと同時にサブスクを解禁してしまえば、アルバムCDの販売にはマイナスとなり、一気に日本市場におけるCDというメディアの衰退を加速するという思いもあるに違いありません。
「シティポップ」ブームの主体はミレニアル世代
それでは、このまま山下氏が「一生サブスクをやらない」ということですと、アメリカから見ていると「それは残念」という感触を持たざるを得ません。
現在のアメリカでは、日本の80年代のフォーク、ロック系の音楽が、「シティポップ」というカテゴリで一括りにされながら、空前のブームになっています。具体的には、山下氏の妻の竹内まりや氏の『プラスティック・ラブ』が、非公式のYouTube動画が5000万回再生、公式ビデオが900万回再生という突出したヒットになっているのが好例です。
他にも、松原みき氏の『真夜中のドア』であるとか、山下氏とはバンドのシュガーベイブ時代の仲間である大貫妙子氏や、YMOメンバーの細野晴臣氏の一連の楽曲など、とにかく意外な形で、日本の古い楽曲がヒットしています。そんな中で、山下達郎氏の存在は、最初は竹内氏の夫で共同制作者という理解、そして、現在は「シティポップの大御所」という認識になっています。
この「シティポップ」ブームですが、主体となっているのは日本のように「往年のファン」ではありません。ミレニアル世代かあるいはもっと下の、21世紀になって生まれた10代の若者などが強く支持しているのが特徴です。また、それこそ日本の70年代から80年代の「洋楽ブーム」と全く同じで、日本語の歌詞への理解は薄く、純音楽的と言っていい楽しみ方になっていると言えます。
ブームの要因については諸説があります。一般的には、「80年代へのノスタルジー」だとか「音楽的に高度な作り込みへの評価」あるいは「AIのアルゴリズムが生み出した偶発的ヒット」という説明がされています。
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