コラム

双方の副大統領候補がともに「条件クリア」を証明したテレビ討論

2020年10月09日(金)15時45分

サンディエゴの飲食店のテラス席でモニターに映し出された7日のテレビ討論会 Mile Blake-REUTERS

<バイデンの立ち位置を忠実に代弁したハリスと、中途半端なトランプ擁護に終始したペンス>

10月7日(水)、副大統領候補テレビ討論がユタ州のソルトレイクシティーで行われました。今回は史上最悪と言われた大統領候補の第1回討論とは違って、発言妨害や罵倒合戦はなく整然と進行しました。発言時間をオーバーしたり、都合の悪い質問についてすり替えを行ったりすることは結構ありましたが、とにかく90分間、まともな議論として進行したのは9月29日の第1回大統領テレビ討論とは大違いでした。

ペンス副大統領の場合は、トランプ大統領が病身ですし、ハリス候補の場合はバイデン候補が高齢ということで、両候補ともに、「いつでも大統領に昇格できる」資質を期待されているわけですが、今回の討論を通じてその条件をクリアしているという証明はされたと言って良いと思います。

特に強く印象に残ったのは、ハリス候補が90分の討論を通じて一貫して「バイデンはこうする」とか「ジョーはこう考えている」という言い方で、バイデン候補の立場を忠実に代弁し、当選した場合の新政権の方向性を示していたことでした。一方で、ペンス副大統領には、トランプ闘病という事態を受けて、ペンス主導による共和党本流との連携路線などが見えるかとも思ったのですが、そうした言動はなく、やや中途半端なトランプ擁護の言動が目立っていました。

今回のテレビ討論は「引き分け」

この点も含めて、今回の副大統領討論は基本的に想定内に終わり、勝負ということでは「未決定層の投票行動を変えるには至らなかった」つまりは引き分けということだと思います。

そこで改めて、10月15日に予定されている第2回大統領選テレビ討論が注目されることとなりました。この大統領候補同士の第2回の討論については、実は現時点では開催が決まっていません。というのは、事前に両陣営も加わって決定していたルールでは、テレビ討論の72時間前にPCR陰性を証明できなければ候補は参加できないというルールになっているからです。

自分は健康になったと自信満々の大統領ですが、少なくとも10月2日には血中酸素濃度が下降、発熱もあり、酸素吸入もしたという大統領がそんなに簡単に陰性になるとは思えません。そこで、バイデン陣営は「リモートでの開催」を提案しているのですが、大統領はこれを拒否しています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story