コラム

スーパーチューズデーで民主党は混戦から抜け出せるのか

2020年03月03日(火)16時10分

中道派の票をバイデンに一本化しようという流れが進んでいるが…… Elizabeth Frantz-REUTERS

<中道派が候補を一本化できるか、そして最終的な候補者選定に向けて左派と中道派の分裂を回避できるか、民主党予備選は3日にいよいよ前半のヤマ場を迎える>

2月初旬のアイオワ党員集会から始まった、米民主党の大統領候補予備選レースは、基本的に4つのストーリーを中心に回ってきていました。1つ目は、サンダース候補に代表される左派と、これに対抗する中道派の対決というストーリー、2つ目は、乱立気味の中道派候補が果たして一本化できるかという問題、3つ目は、序盤の4州における予備選を「捨てて」スーパーチューズデーに賭け、そこに大量の資金を投下したブルームバーグの存在、4つ目はサンダース(78)、バイデン(77)、ブルームバーグ(78)、ウォーレン(70)という世代と、クロブチャー(59)、ブティジェッジ(38)という比較的若い層との世代間対決です。

このうち、4番目の世代間対決については、あっけなく結果が出てしまいました。2月29日のサウスカロライナ州予備選の結果が低迷したことを受けて、3月1日にブティジェッジが、そして2日にはクロブチャーがそれぞれ撤退を表明したのです。これで、今後の展開は70歳代の4人に絞られることになりました。

ブティジェッジは、アイオワで1位、ニューハンプシャーで2位と序盤戦では旋風を巻き起こしましたが、ネバダ、サウスカロライナでは全くの不振、特にサウスカロライナではアフリカ系から「典型的な北部の白人候補」とみなされて全く支持が得られませんでした。

そのため、アメリカ時間3月3日のスーパーチューズデーでは、カリフォルニア、テキサスといった代議員数の多い大規模州で3位以内に入る見込みが立たなくなっていました。こうした情勢を受けて、選挙資金を支えて来た支持層が急速に離反したようです。

姿を消した次世代リーダー候補の2人

クロブチャーの場合は、政治資金の状況はさらに深刻で、スーパーチューズデーへ向けて該当州の全てでの選挙戦が展開できずに苦しんでいました。いずれにしても、より若い世代のリーダー候補として、そして実現可能な政策を掲げた中道派として、期待されていた2人はこれで姿を消すことになりました。

この2人はすぐに、「バイデンへの支持」を表明しており、いずれも「早期に民主党が一本化してトランプに対抗すべき」としています。政策的には同じ中道候補ということで自然な流れに見えますが、例えばトランプ大統領などは「どうせ副大統領候補にするというバーター取引("quo pro quid")で撤退したんだろう」などと揶揄しています。

では、これからスーパーチューズデーを経て、7月の民主党大会まで予備選レースが続きますが、今後の展開はどういったストーリーで見ていったら良いのでしょうか? 基本的に残る3つ、つまり「党内左派と中道派の分裂」「ブルームバーグの資金力選挙」、そして「中道一本化の難しさ」というストーリーは当分の間は続きそうです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story