コラム

西日本豪雨の腰の引けた災害報道は、見直す時ではないか

2018年07月10日(火)16時15分

3点目は、取材活動は地元第一主義でお願いしたいということです。昨今のテレビのニュース番組や情報番組では、全国各地での災害や事件があると、全国ネットのメインキャスターや、レギュラーのレポーターを「現地に派遣」してレポートするのが主流です。見慣れたキャラクターが現場から報告すると、そのキャラクターに親近感を持っている視聴者が「臨場感」を感じるというわけですが、その結果として、情報そのものの現場感覚は希薄になります。

そうではなくて、それぞれの地形や地域社会を熟知した現地の記者やレポーターが、より地元に密着した「現場ならではの情報という臨場感」を持って報告するというのがあるべき姿でしょう。

NHKや全国紙であれば各地に支局がありますし、民放の場合でも系列局があるはずです。そうした地元に根ざしたプロによる報道が、全国に流れるようにすれば、災害の切迫感はより伝わるのではないかと思います。また、地元に密着したローカル局や支局の取材活動であれば、反感を持つ人も減るのではないでしょうか。もちろんですが、必要な追加予算は全国ネットで用意するべきです。

4点目は、こうした深刻な状況だからこそ、いま、何が必要か、どうなっているのかを報道を通じて訴えるべきだと思います。必要なのが物資ではなく義援金なのであれば、その振込方法を案内するべきです。物流が混乱している問題については回復の見込みが立つのかどうかを、地域別に報じるべきだと思います。

救助活動に関しては、自衛隊に加えて、全国から警察・消防が応援に入っています。酷暑の中、大変な作業が続いていると思います。少なくとも、どの部隊や、どの都道府県から、どのぐらいの応援が入っているのか、また彼らはどんな状況なのかといった現状の報道も必要でしょう。

一方で、ボランティアが必要で、受け付けている地域があるならば、参加条件などの案内も必要でしょうし、ボランティアについては、主要メディアがポータルサイトなどを設けて、ニーズのあるところに人が行くように、工夫をしたら良いと思います。

最大の問題は、メディアや全国スポンサーが東京一極集中となる中で、今回のような西日本、それも中国・四国と九州が中心の災害に関しては、現場感覚が希薄だということです。だからこそ、ローカル局や支局を表舞台に上げて、しっかりした報道が必要だと思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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