コラム

北朝鮮危機には「現状維持」以外の解がない

2017年04月18日(火)17時20分

朝鮮半島情勢は緊迫化しているがトランプ政権は平静を保っている Joshua Roberts-REUTERS

<北朝鮮側に核開発を放棄する意思がない以上、現状維持以外に落とし所はない。トランプ政権の平静さには、米中が主軸となって圧力をかけ続けるしかないという覚悟は感じられる>

北朝鮮は依然として、長距離弾道ミサイル(ICBM)の保有を誇示しつつ、新たな核実験の可能性を否定していません。これに対して、アメリカは2つの空母打撃群を北朝鮮の近海に派遣するとともに、ペンス副大統領が韓国、日本など東アジア諸国を訪問して圧力をかけています。

一方で、中国の習近平政権は、言葉では米国と北朝鮮に自制を求め、両者の対立を批判していますが、その一方で中国国際航空の北京=平壌便の運航を停止し、北朝鮮への団体ツアーを中止するなど独自の制裁を行っているようです。この中国の動きは、フロリダでの米中会談を受けた行動として映ることから、政治的には米中連携を誇示する効果はありそうです。

そんな中で、米国のトランプ政権、メディア、世論は終始冷静です。トランプ大統領は危機が続く中で、週末はフロリダにある自社保有のリゾートに出かけ、ツイートなども封印して沈黙を守りました。いつもは経費のムダを指摘するメディアも、結果的に米国の平静さを表現した大統領の行動には理解を示しているようです。

週明け17日には、北朝鮮のキム・インリョン国連次席大使が国連本部で記者会見し、その映像がCNNなどで一斉に流れました。内容としては「米国が望むどんなスタイルの戦争にも対応する用意がある」とか、米国が軍事行動に踏み切れば「最大限強硬な報復措置を取る」などと強硬姿勢を見せた上で、核戦力強化についても正当化していました。

【参考記事】北朝鮮は戦争をしたいのか?したくないのか?

ですが、丁寧な英語でゆっくりとステートメントを読み上げた次席大使の様子は、それほど切迫した印象は与えていません。また、この会見の最も重要な部分は、国連安保理で北朝鮮核問題に関する閣僚級会合への参加を拒否するという意思表明でした。ですが、その重要な閣僚級会合というのは、10日後の28日にセットされているわけで、そのスケジュールから言えば、切迫した危機とは少し違います。

では、仮に危機のピークは過ぎたとして、一体どんな「落とし所」があるのでしょうか?

まず、今回の危機の本質は、北朝鮮が核兵器を開発して実験を繰り返すとともに、射程の短いものから長距離のものまで各種のミサイルを開発している、その結果として近隣諸国から、遠く離れたアメリカまで広い範囲での脅威が発生しているという問題です。

さらに遡れば、北朝鮮はIAEA(国際原子力機関)から1994年に脱退し、さらにNPT(核拡散防止条約)から2003年に脱退しています。脱退したから自由に核開発ができるというのは、北朝鮮の勝手な言い分であり、国際法の精神からすれば核廃棄を行ってNPTとIAEAに復帰するのが当然の解決策となるはずです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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