コラム

日米首脳会談、異例の厚遇は「公私混同」なのか?

2017年02月14日(火)12時00分

大統領専用機エアフォースワンでフロリダに向かう安倍首相夫妻とトランプ大統領夫妻 Carlos Barria-REUTERS

<トランプ大統領のフロリダの別荘で安倍首相が異例の厚遇を受けたことについて、新政権への批判が続くアメリカでは「公私混同」の倫理問題という受け止め方がある>

安倍首相とトランプ大統領の日米首脳会談については、日本では大変に大きく報道されているようですが、アメリカのメディアの受け止め方はかなり違っています。3点ほど指摘しておきたいと思います。

1つ目は、まず10日金曜の時点での「無関心」です。ホワイトハウスでの会談と共同会見に関しては、特にCNNなどのニュース専門局は一斉に生中継をしていました。ですが、その報道の切り口は「日米関係はどうなる?」という視点ではなく、「入国禁止問題で渦中の大統領が生放送の記者会見に出てくる」という関心が主でした。

例えば、この10日の共同記者会見でトランプ大統領が指名したアメリカ側の記者は、日米関係の問題ではなく、真っ先にこの「7カ国からの入国禁止問題」について質問しました。隣に安倍首相がいるにも関わらず、直接関係のない「入国禁止問題」の質問が飛び出すというのは極めて不自然ですが、とにかくアメリカの世論とメディアの関心はそこにあったのです。逆に肝心の日米関係に関しては「無関心」でした。

【参考記事】トランプとの会談は日ロ首脳会談の二の舞にするな

2つ目は、両首脳がフロリダに移ってから北朝鮮がミサイルを発射したというニュースが飛び込んできました。ここでアメリカの世論の関心も、またそれを受けたメディアの報道姿勢も「アジア情勢と日米関係」へと急転回しました。

結果的に、日米首脳会談は大きな扱いとなり、週明けの13日の朝、3大ネットワークの一つであるNBCの朝のニュースではトランプ大統領の「100%日本の後ろ盾になる」というコメントが大きく流れ、安倍首相のこともあらためて取り上げられています。

3つ目は、フロリダのリゾートで両首脳が長時間に渡ってゴルフや会食を行ったということについては、アメリカのメディアではあまり大きく取り上げられていません。その理由としては、首脳同士の外交としては、今回のゴルフと度重なる会食というのは極めて異例だからです。

もっと言えば、詳しく報道がされれば大きな批判を招きかねないということで、メディアはシャットアウトされたと言っていいでしょう。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、欧州PMIでユーロ一

ワールド

アングル:米政権の長射程兵器攻撃容認、背景に北朝鮮

ワールド

11月インドPMI、サービスが3カ月ぶり高水準 コ

ビジネス

S&P、アダニ・グループ3社の見通し引き下げ 米で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story