コラム

「健康問題」と「罵倒合戦」で脱線気味の大統領選

2016年09月16日(金)15時40分

 結果的にヒラリーは、やはりカゼ程度だったようで、3日間の完全休養の後、15日の木曜日にはまずノースカロライナで遊説を行い、その晩にはワシントンDCに入って、ヒスパニック系の集会で「トランプ批判」に気炎を上げていました。

 ということで、「健康問題」というのはメディアの暴走だったわけですが、健康になって戻ってきたヒラリーは、相変わらず「トランプ罵倒作戦」にかかりきりです。とにかく、まともな政策論争はゼロです。これまでの選挙戦ですと「静かに相手の欠点やスキャンダルを暴露して批判する」という、良く言えば上品な、悪く言えば陰湿な「人格攻撃」がありましたが、今回は「全力罵倒モード」の激突という感じになっています。

 特に先週ヒラリーが「トランプ支持者の半分」は "basket of deplorable" だという発言をしたのは傑作でした。この表現ですが、イディオムとして定着したものではなく、ヒラリーのアドリブのようで、意味としては「残念な人々の集まり」という感じです。

【参考記事】米国でも子育て支援の充実が大統領選の論点に

 もっと突っ込んでニュアンスを取るならば、「小銭を集めるとか、ジャガイモを入れておくような貧相なカゴ一杯にてんこ盛りになった、嘆かわしいダメダメな連中」というような感じです。ヒラリーは、その具体例として「セクシスト(男女の性的魅力を強調する)、男性至上主義者、イスラム恐怖症、異性愛至上主義」などを挙げていました。

 日本なら「大炎上」というところですが、アメリカは実にアッケラカンとしていて、トランプ陣営では早速「ヒラリーは、あなたを残念な人と言っている」キャンペーンのCFを流していますし、トランプ陣営は「残念な人Tシャツ」を販売して盛り上がっています。ヒラリーの方は、さすがに「マズイ」と思ったのか、一応謝罪はしています。今回の「肺炎事件」は、もしかしたらヒラリーがこの発言に象徴されるように「トランプ叩きに熱くなりすぎた」ためかもしれません。

 ですが、遊説再開後も、相変わらず「トランプ罵倒」の姿勢は変わりません。両陣営が一緒になって、内容のない、ハッキリ言って非常に低レベルの選挙戦をやっています。これはなぜなのでしょうか?

 2つあると思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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