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「パナマ文書」問題がアメリカでは大騒ぎにならない理由
一つには、そもそも「租税回避地を使う」ことも含めて、合法的な節税を行うことには、まったく罪悪感がないというカルチャーがあると思います。建国の理由が英国王の徴税権からの離脱が目的だったこともありますし、そもそも節税や脱税に関する倫理的な非難が「されない」風土があるのです。
80~90年代にレオナ・ヘルムズリーという女性が、ニューヨークのホテル王として一世を風靡しました。同時に彼女は「税金を払うのが嫌い」だと放言して脱税を繰り返し、逮捕されたり収監されたりという「お騒がせ」の存在でした。ですが、彼女が「脱税女王」として有名になっても、彼女の名前を冠した「ヘルムズリー・ホテルズ」のブランドは、彼女の存命中は衰えることはなかったように思います。
現代のニューヨークのホテル王といえばドナルド・トランプですが、彼は大統領候補でありながら、確定申告書の公開を拒んでいて、その理由が「確定申告書がいつまでも確定しないから」と言っています。どういうことかと言うと、14年連続で税務調査の対象となり、要するに申告しても税務署が信じないので必ず税務調査がされて、最後は彼の得意な「ディール」で済ませるまで何年もかかるというわけです。
そこまで納税意識が低いと、欧州やアジアでは社会的に非難されそうですが、アメリカでは、この点に関して言えば「トランプ支持派」でなくても、そんなに目くじらを立てることはありません。
もう一つの理由は、租税回避地を使った節税が余りにも一般的になっているために、今回のリークの対象となった専門の法律事務所を使わなくても、アメリカ国内の普通の大手の会計事務所でオープンにできてしまうし、上場企業の場合は開示資料の中で堂々と開示していることが多いということがあります。その結果として、アメリカの「利用者」は、今回のモサック・フォンセカのリークには、余り入っていなかったということがあると思います。
ちなみに、今回の「パナマ文書」問題に激怒して、オフショアを使った節税への規制強化に乗り出すという主張をしているのは、バーニー・サンダース候補です。これもアメリカでは、要するに「社会主義的な」左派ポピュリズムの立場からでないと、租税回避地の利用に対する積極的な批判は出てこないというわけです。
オバマ大統領も事件を受けて「税法の欠陥を埋めるような改善が必要」だと述べていますが、同時に「租税回避地の利用を取り締まる」というサンダースのような主張が、TPP批判とセットになって保護貿易的な「経済鎖国思想」になることには警戒感を持っているようです。共和党の主流派になると、それはもっと顕著です。
このような理由から、「パナマ文書」問題に対するアメリカの姿勢は、欧州やアジアでの大騒ぎとは少しトーンが異なっています。
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