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廃棄と再利用、循環型社会が認める「ダブルスタンダード」とは
リユースや廃棄に関する、このような「差」というのは、他の産業でも見られます。例えば、ある国やマーケットでは「廃棄処分」になるものが、国境を越えたり、マーケットが変わったりすると商品価値を持つ場合があります。中古の輸送用機器がいい例です。
航空機の場合ですと、20年ぐらい経過した機材について各国のメガキャリアは「退役」させるわけですが、それがLCC(格安航空会社)や貨物輸送のマーケットでは受け入れられるということがあります。メガキャリアは機体の新しさが安全性の保証だというマーケティング的な理由から機材更新をするのですが、LCCや貨物の場合は運送コストの削減を優先するので中古機材でも構わないという判断をします。
乗客や荷主とすれば、LCCや貨物でも最新機材による安全性が保証されれば、それに越したことはないわけですが、価格を考えると古い機材でも構わないとして受け入れるのです。ただし、この場合は中古機材でもメーカーの厳しいメンテナンス・マニュアルは運用されて整備がされ、当該機種の免許を持った機長が操縦するという最低限のガイドラインは守られるのが前提となっています。
自動車やバイクの場合も、日本の中古品が海外で人気商品になる現象があります。この場合は、整備はメーカー・マニュアルに準拠していないでしょうし、交換部品も純正でない可能性が高いわけで、信頼性ということでは日本国内で運用していた場合より落ちるかもしれません。ですが、少なくとも輸入国の車検を通っているのであれば違法性はなく、またその国の「国内産の新車・中古車」よりも車両として安全性が高いのであれば、倫理的な問題も少ないでしょう。
中古の鉄道車両の輸出というのはもっと特殊で、日本側でも輸出組合を作って品質管理をしていますし、政府もODAで移送費を援助するなど国策として推進しています。鉄道車両の場合は、経済性の追求や車両の統一化の推進、あるいは最新のATC(自動列車制御装置)に対応するなど、更新の理由が日本独自であって、客観基準から見て「安全性に問題のない中古」が発生するという特殊事情があるのも事実です。
ということは、航空機、自動車、バイク、鉄道車両の場合は、新品を使うマーケットや国と、中古でも構わないマーケットの間には、お互いに構造的な違いがあり、それぞれの事情で中古品を売買することが「ウィン・ウィン」の関係になるということが言えます。いわば「ダブルスタンダード」ではありますが、それはそれで構わないということです。
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