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英語を学べば学ぶほど「自分が小さく見える」?
今月出版した『アイビーリーグの入り方』(阪急コミュニケーションズ刊)には、おかげさまで様々な反響をいただきました。留学希望者に役立つという評価や日米の受験制度・教育制度の違いが分かるという評価に加えて、意外に好評をいただいているのが「おわりに」の部分で書いたメッセージです。
ここでは、留学後の姿勢として「まず英語漬けになること」そして「異文化への『のめり込み期』と『幻滅期』を経験した後の、本当の異文化理解」を目指すことを訴えました。知らない土地に留学する際に、こうした心構えは最も重要だと考えたからです。
こうしたメッセージを発信する中で、改めて「日本の英語教育」に関する意見を求めたいという声もいただきました。英語教育に関しては、この欄で2010年に4回にわたって「公用語時代、日本人の英語はどうあるべきか?」というタイトルで、様々な角度から提言をしたことがあります。ですが、よく考えると、議論がやや枝葉末節に偏っていた点は否めません。今回は「日本の英語教育がうまくいかない理由」として、この間、ずっと考えていた問題を議論してみたいと思います。
日本では、どうして英語教育がうまくいかないのでしょうか? 一人ひとりの日本人に関して、どうして英語を学習することが喜びにならないのでしょう? たぶんその根っこの部分には、一つの問題があるように思います。
それは、中学生から大人まで、日本人は「英語を学べば学ぶほど、英語の使えない屈辱や失望から、国際社会における誇りを失う」ような心情にとらわれてしまうということです。簡単にいえば、英語を学べば学ぶほど「自分が小さく見える」という問題です。
この変形としては、英語を学びながら、英語が話せない、聞き取れないという経験を重ねることで、自分が、あるいは日本人が英語のネイティブスピーカーより「劣っている」あるいは「負けている」という感覚が繰り返されるということがあります。
その結果のあらわれ方は人によって異なります。ある場合には、英語が嫌いになったり、海外への関心を失ったり、またある場合には被害感の延長で「相手の敵意」を勝手に感じて英語話者を嫌うようになり、さらには少し出来るようになっただけで、今度は出来ない人を見下すようになるなど、色々な表れ方をするわけです。どれも、態度としては誤りだと思いますが、現象としては悲劇だと思います。
もちろん本当は違うのです。英語話者の方が日本人より「偉い」とか「偉くない」というような心理は、感じなくていいのです。そうした上下の比較とか、上下の感覚というのは不要なのです。ですが、英語教育の過程で「そんな上下の感覚は感じなくていい」などという「キレイ事」を繰り返したとして、多くの若者の英語への関心を引き寄せるように事態を好転させることができるとは思えません。
そうであるのならば、これを反転させ、「英語を学べば学ぶほど、国際社会における日本人として、そして自分としての誇りを実感する」ようなメソッド、カリキュラム、そして英語教育の位置付けへと変えていく必要があるように思います。そうでなければ、本当の意味での学習のモチベーションは高まりません。
たぶん具体的には2つあるのだと思います。
英語とともに、明治期の日本人のように謙虚かつ貪欲に国際社会における「共通価値観」を習得して、国際社会で胸が張れるようにすること、これが一つの筋道です。英語の世界においては、少なくとも個人の尊厳が尊重され、そのようにコミュニケーションがされる、そうした経験の延長として、英語を学ぶこと、国際社会に出ていくことは「一番下から這い上がっていく」ことではなく、少なくとも英語の世界なり、国際社会というのは「自分を一個の人間として認めてくれる場所」なのだということを、早期に気づかせるといいますか、実感させるようにしなくてはならないと思うのです。
例えば英語の教師、あるいは外国人の英語話者の指導者などには、そのことを強く意識してもらうことが重要だと思います。会話の中の表現なども、意識してそうした対等性の確保をしてゆくべきだと思います。
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