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プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ここがヘンだよ衆院選
今回の日本の衆院選については「筋の通らない」ことばかりが目について、こんなことで日本の方向性が決まってしまって良いのか、大変に心配になります。一番大切なことは一昨日のエントリで申し上げた「景気と雇用」という有権者の最大の関心事に十分応えていないという問題ですが、今回はこの選挙の「基本的な構図」に関連した問題点を整理しておこうと思います。
(1)今回の解散ですが、そもそもは税と社会保障の一体改革に関する「三党合意」があったわけです。その三党合意の条件に「解散」という約束があったから解散がされたという面もありますが、その大義としては三党合意に関する民意を問うということがあったはずです。ですが、これがどうも怪しくなっているわけです。特に自民党は漠然と「反消費税」の感情論に擦り寄ろうとしているわけで、これでは「三党合意を理由に問責決議」をやった谷垣前総裁の論理破綻がまだ続いているように見えるのです。
(2)どこの党も恐らくは単独過半数は取れないと言われています。更に言えば、全小選挙区に候補を立てられない政党も多いわけです。ということは「選挙後の連立工作」というのが選挙そのものと同じく重要になるわけですが、ほとんどの党が「選挙後の連携方針」を示していません。勿論、どう動くかは結果を見ないと決められないのは分かりますが、「この点で一致しなければ組まない」とか「こういう条件なら連立に乗る」という原則論ですら曖昧なままです。これでは、政権ができても全く民意と乖離する危険があるわけで、それではその連立政権も「そんなには持たない」ことになるのではという心配があります。
(3)今回の衆院選での対決構図を見ると、2大政党制を前提とした小選挙区制度はほとんど崩壊したように思われます。であるならば、選挙制度の議論が重要な争点になるべきですが、それがハッキリ出て来ていないのはおかしいと思います。
(4)それにしても、少子化対策とか東北の復興といった問題に関しては、もう争点にはならないのでしょうか? 少子化は更に加速しており、今年2012年の出生数は106万人程度、死亡数は126万人ぐらいという見込みであり、日本の人口は毎年20万人ずつ確実に減少して行くのです。また東北の漁業インフラ、交通網の再建、防災体制なども現在のスピードで良いとは思えません。どうしてこういった問題が争点にならないのでしょうか?
(5)以降は各党の政策に関する疑問になります。まず安倍自民党の「国防軍」構想ですが、改憲を前提にしているから先の話だと言っても、細かな問題が気になります。まず、海上自衛隊とか陸上自衛隊というのは海軍とか陸軍というのでしょうか? その場合に英語名称は「セルフ・ディフェンス・フォース」ではなく「ジャパニーズ・アーミー」とか「ネイビー」になるのでしょうか? また災害救助に関する期待と責任に関しては自衛隊と変わらないのでしょうか? 最大の問題点としては交戦規定の見直しです。交戦規定の見直しを同時に行うというのは「改憲して国防軍へ改組」するまでは、自衛隊のままでの交戦規定の改訂は行わないということなのでしょうか?
(6)維新の会に関しては橋下市長と石原前知事のズレが色々と出てきているわけですが、最大の矛盾として、そもそも一極集中の責任者と地方分権論者がどうして組めるのでしょうか? ところで、維新の国政進出は大阪都構想の「手段」というのが原点であったはずですが、太陽と合併した後ではその原点は一体どうなったのでしょう?
(7)消費税の地方税化は混乱するからダメだという論がありますが、地方ごとに異なる税制があって、それぞれの地方の経済社会の個性になっていくというのは、混乱ではなく多様化としてあると思うのですが、どうしてそんなに怖がるのでしょうか?
(8)野田民主党ですが、折角「小鳩」系の人たちは去っていったのですから、財源がなくて潰れたマニフェストに関する「おわび」はいつまでも続ける必要があるのでしょうか? そうではなくて、とりあえず過去3年間、日本経済を大破綻なく進めてきた実績とか、いわゆるイデオロギー的なものだけでなく、経済財政政策も含めた「中道実務主義」的な姿勢について、もうちょっと胸を張っても良さそうに思うのですが。
(9)未来の党の政策には、それこそ挫折した2009年の民主党マニフェストの内容が残っているのですが、改めてもっと精度の高い財源の根拠について出す計画はあるのでしょうか? それとも与党になって「本当に実施する」ことはそもそも想定していない、要するに野党的なフィクションとまで行かなくても「イデオロギーを訴えるための比喩」に過ぎないのでしょうか?
まだまだ問題点はあると思います。こうした点について、1つ1つを厳格に問いかけていくことでしか、現在の日本政治の「カオス」状態は抜け出せないのではと思うのです。
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