機関投資家、「投資先の全対象企業と対話」が進む、人材の育成や多様性に高い関心 ~ESG投資実態調査2024~
《調査結果の詳細》
◆「エンゲージメント」の実施、回答者の80%
(1) 機関投資家が実行している投資手法のうち上位を占めたのは、ESG要因を投資分析や決定に組み込む「ESGインテグレーション」で、昨年より1ポイント上昇して91%に達し、2年連続で首位になりました。次いで「エンゲージメント」(80%)、「議決権行使」(75%)が続き、これら上位3手法が、割合や順位の変動があるものの、21年から4年連続で同じ顔触れになりました。
(2) 企業との対話が少しずつ進んでいることもわかりました。「エンゲージメント」をすべての投資対象企業と実行できたとの回答は32%で、昨年から5ポイント上昇しました。一方、「対象企業のうち実行できない会社があった」のは合計51%と4ポイント低下しました。内訳は「自社の経営資源が不十分」(24%)、「対象企業の対応が不十分」(15%)、「自社の経営資源・対象企業の対応ともに不十分」(12%)となりました。
◆「エンゲージメント」のテーマ、「人的資本」と「取締役会の構成」が過半
(1) 重視している「エンゲージメント」のテーマは24年に選択肢に加えた「人的資本(人材育成・確保を含む)」が63%で2位、「取締役会の構成(説明責任や実効性含む、ESGスキルの有無など)」は56%で4位と、ともに回答した機関投資家の過半が選択しました。また「生物多様性(TNFD=自然関連財務情報開示タスクフォース=対応含む)」が49%(6位)と昨年から16ポイント上昇しました。
(2) 投資分析や決定に組み込む要因としては、「取締役会のジェンダーの多様性」が65%(2位)と昨年から10ポイント上昇。「男女間賃金の格差などのジェンダー平等」は20ポイント上昇の51%(7位)となり、いずれも過半を超えました。また、「労働安全衛生に関する方針」が18ポイント上昇の55%(3位)、「廃棄物対策・リサイクルなどサーキュラリティ、循環型経済への対応」は33%から47%(8位)に上昇しました。
なお、対話のテーマ、投資判断に組み込む要因の首位はともに気候変動関連でした。
◆「インパクト加重会計」などのESG定量開示を評価
(1) 最近、ESG活動を定量化する「インパクト加重会計」などの手法を使って、ESG活動と企業価値との関係を定量化して開示する企業が増えています。今回こうした取り組みについて尋ねたところ、「評価している」(39%)、「どちらかといえば評価している」(25%)を合わせて6割を超す機関投資家が価値を認めています。
(2) 一方、ESGに関する評価の手法をESG投資に何らかの形で導入するかという設問では、「導入する予定はない」が63%を占めました。「すでに導入している」(6%)、「現在導入に向けて取り組んでいる」(6%)という機関投資家もいますが、「説明する分析ロジックや方法論が確立していない、途上である」(69%)とみる向きが多いようです。
【ESG投資実態調査とは】
投資先企業の財務情報に加え、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)に関する情報から事業の持続性や収益性について、機関投資家がどう評価しようとしているのかを2019年から毎年調査しています。2024年調査は6回目です。
【2024年調査の概要】
調査対象 :日本国内に拠点を置く267の機関投資家。
「日本版スチュワードシップ・コード」の受け入れ表明機関か
責任投資原則(PRI)署名機関から抽出。
回答組織数:67(うちアセットマネジャー44、アセットオーナー23)
調査期間 :2024年8月19日~10月10日
・ESG投資実態調査2024(要約版)はこちら
https://corporate-quick.satori.site/form_service_ESGInvestmentSurvey2024
[QUICK ESG研究所] https://corporate.quick.co.jp/esg/
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