Picture Power

【写真特集】ブラジル先住民に死と病を運んだゴールドラッシュ

DEADLY GOLD RUSH

Photographs by LALO DE ALMEIDA

2023年05月27日(土)17時00分

ブラジル北部ロライマ州で、観光保全当局によって焼かれた違法採掘者の飛行機

<違法採掘者が持ち込んだ病や犯罪、環境汚染によって、アマゾン先住民族の多くの子供が命を落とした>

ブラジルの先住民族ヤノマミ族が、金を違法に採掘する者たちから命の危険にさらされている。ヤノマミ族が暮らすのは、ブラジル北部のアマゾン熱帯雨林地域。ジャイル・ボルソナロ前大統領が先住民居住地での鉱物採掘を認めたことで、地下に眠る鉱物資源を手に入れようと、約2万人の違法採掘者が殺到した。

しかしこの「ゴールドラッシュ」は、狩猟と採集を生業とするヤノマミ族にとっては侵略、破壊行為に等しかった。侵略者は人口約3万のヤノマミ族居住地にマラリアなどの病や犯罪を持ち込み、金の精製過程では水銀が川や土壌を汚染。魚などを介した水銀中毒が発生したため、食糧難と栄養失調が深刻化した。前政権下の4年間で、死亡した5歳未満のヤノマミ族の子供は少なくとも570人に上る。

ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ現大統領は今年1月の就任直後に非常事態宣言を出し、違法採掘者の撲滅に乗り出した。だが、ヤノマミ族が侵略者から奪われたものはあまりに大きい。

ppgold02.jpg

パイロットの手には、ヤノマミ族居住地で違法採掘された小さな金塊が


ppgold03.jpg

ブラジルの観光保全当局者が、ヤノマミ族居住地内の違法採掘現場にヘリコプターで降り立つ


ppgold04.jpg

マラリアと栄養失調のためヘリで救出されるヤノマミ族の女性。採掘者たちは、医療不足のヤノマミ族居住地に病まで持ち込んだ


ppgold05.jpg

ロライマ州の病院で栄養失調の治療を受けるヤノマミ族の子供。ブラジル政府は今年1月、ヤノマミ族居住地の公衆衛生について非常事態宣言を出した


ppgold06.jpg

ブラジル空軍が貨物輸送機を使ってヤノマミ族居住地に食糧を投下。違法採掘者の侵入によって居住地では深刻な環境汚染が広がり、食糧難と健康被害が深刻化している


ppgold07.jpg

ロライマ州を流れるムカジャイ川。川の汚染からも、この地域で違法採掘が行われていることが分かる

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米2月フィラデルフィア連銀業況指数、約5年ぶり低下

ワールド

中ロ外相が会談、対米関係やウクライナ紛争など協議=

ワールド

ウクライナは批判自制を、鉱物協定の調印必要=米大統

ワールド

ウクライナ外相、米特使と会談 「永続的な平和」巡り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に最適な野菜とは?
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 7
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story