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【写真特集】驚きと躍動と謎に満ちた野生の世界
HERE'S MOTHER NATURE
Photographs by 2021 Wildlife Photographer of the Year
「水面下」部門 『創造』/ローラン・バレスタ(フランス) Laurent Ballesta/2021 Wildlife Photographer of the Year
<野生生物が生み出すこの世を超越した美>
フランス領ポリネシアのファカラバ島の環礁には年に1度、7月の満月の頃に無数のマダラハタが集結し一斉に産卵する。その珍しい瞬間を捉えた作品が、第57回野生生物写真コンテスト(英ロンドンの自然史博物館が運営・審査)の今年の大賞に選ばれた。
『創造』と題した1枚に写るのは雲状に広がる卵と精子、3匹のマダラハタ。撮影者はフランスの水中写真家で生物学者のローラン・バレスタだ。ロザムンド・キッドマン・コックス審査委員長は「意外で、エネルギッシュで、興味をそそり、この世を超越した美がある」と評した。「放出された最後の卵がクエスチョンマークのように残る、神秘の瞬間を捉えてもいる。強力な生命の創造の瞬間だ」
今年は10月中旬に国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が、10月末からは国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が催される。そんな今、人類が変わらなければ何を失うことになるのか、『創造』は説得力をもって訴える。
以下に紹介するのは、同じく驚きに満ちた自然界の一瞬や光景を写し、各部門で1位となった作品たちだ。
<冒頭写真の解説>
雲状に広がる卵と精子とマダラハタ。仏領ポリネシアのファカラバ島の環礁では7月の満月の頃、無数のマダラハタが一斉に産卵する。ローラン・バレスタと彼のチームは5年間にわたり環礁を訪れ、昼夜問わず海に潜ってその瞬間を待った。この環礁はユネスコ(国連教育科学文化機関)の生物圏保護区であり、乱獲に脅かされる絶滅危惧種のマダラハタも安全だ。
「動物の肖像」部門 『沈思』/マジェド・アリ(クウェート)
雨の中、目を閉じるマウンテンゴリラの「キバンデ」。40歳近いこのゴリラに会うため、マジェド・アリはブウィンディ国立公園(ウガンダ)を4時間トレッキングした。アリいわく「上へ行くほど蒸し暑くなり、降り始めた冷たい雨をキバンデは楽しんでいるようだった」。ブウィンディとビルンガ国立公園(コンゴ民主共和国)に生息するマウンテンゴリラは絶滅の瀬戸際にある。Majed Ali/2021 Wildlife Photographer of the Year
「湿原─大局的」部門『 破滅への道』/ハビエル・ラフエンテ(スペイン)
曲線の多い湿原の風景をすっぱり貫く直線道路。ラフエンテはドローン(無人機)を使い、カメラを傾けて撮影することで、水面に反射する日光と常に変化する光という難題に対処した。ビーチへ行くために1980年代に建設されたこの直線道路は、100種以上の鳥類の生息地である干潟を分断してしまった。Javier Lafuente/2021 Wildlife Photographer of the Year
「行動:無脊椎動物」部門 『ゆりかごを紡ぐ』/ギル・ワイゼン(イスラエル/カナダ)
剝がれかけた樹皮の下で、ハシリグモが卵嚢を作っている。「糸を出す糸いぼの動きは織物をする人間の指を思わせた」とギル・ワイゼンは言う。ハシリグモは米北東部の湿地や森林に生息し、孵化するまで卵嚢を持ち歩く。1つの卵嚢に750個以上の卵が入っていた記録も。Gil Wizen/2021 Wildlife Photographer of the Year
「10歳以下」部門 『ドーム型の家』/ビディウン・R・ヘバル(インド)
巣の中のスズミグモを捉えたこの1枚は、背後のトゥクトゥク(三輪タクシー)の色が美しく効果的。スズミグモは脚の長さが1.5センチほど。巣は粘着性がなくて網目が四角形のドーム状だが、毎日新たに作るのではなく修復を重ねていくのだという。Vidyun R Hebbar/2021 Wildlife Photographer of the Year
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