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【写真特集】非暴力のはずのLGBTが銃を握る理由
CONCEALED: LGBT GUN OWNERS
Photographs by BLAKE LITTLE
【Natalie】
銃は身を守るための手段なのに
銃で人を傷つけたい人によって
その権利が奪われている
初めて銃を使ったのは高校生の頃。銃を持つのは、持っていると安全で自分を制御できるから。背が低いので体格的に自衛が難しい。銃は身を守るための手段であるはずなのに、銃で人を傷つけたい人によってその権利が奪われていると感じる。幸い、レズビアンであるせいで暴力を受けたことはないが、公の場で嫌がらせを受けたことはある。ただ、それ以上に不安なのはネット上の罵詈雑言だ。自分自身を狙ったものであるか、LGBTのコミュニティー全体に対してであるかにかかわらずだ。ネットユーザーはオンラインでストレスを発散している。憲法修正第2条が、国家から身を守るために存在しているのだとしたら、銃器は間違いなく守られるべきだ。
【Heather】
銃を持つことで安心などしていない
自衛のために撃った人もたいてい
刑務所に行く羽目になっている
祖父が銃販売店を経営していたので小さい頃から銃になじんでいた。ただ、銃を持てば安心できるかと言われればそうではない。幸い、LGBTであるために差別的な行為を受けたことはないが、たとえ差別されても正しい考えや知識があれば状況を打破できると思う。だから銃を持つことで安全や安心を得て自己制御できるとは考えていない。銃は最後の手段だ。それに、銃を撃つことにはさまざまな法律が絡んでいて、自衛のために撃った人もたいてい刑務所に行く羽目になっている。ただ憲法修正第2条には賛成だ。規制を厳しくしても抜け穴を探るやからが出るだけ。犯罪を止めたければスイスを模範にすればいい。18歳以上は銃が持てる社会だが銃犯罪は少ない。
【Evan】
銃の撃ち方を教えてくれたのは退役軍人だったおじだが、独学もした。最初に撃ったのは21歳の時で、それ以降は保身のためにいつも持ち歩いている。ただ、銃を持つだけで安全が手に入るわけではない。正しく使う知識を持つこと、なるべく危険な状況に身を置かないようにすることが必要だ。自分はLGBTを支持するTシャツを着ていただけで危害を加えられそうになった。幸いけがを負わなかったがトラウマになっている。オーランドの事件は信じられなかった。だが銃を取り上げても別の手段で攻撃されるだけ。そもそも銃を隠していれば入店できる「隠し銃携行許可法」が間違っている。車で来た人に酒を売らないのと同じで銃所持者はバーに入店させるべきでない。
【DeMarcus】
オーランド事件で考えが変わった?
いや、特に変わらなかった
乱射事件は常態化しつつあり
自分も銃犯罪に鈍感になった
家族はほとんど銃を持っていた。祖母もおじもおばも曽祖母も......。銃は家のそこかしこにあって、小さい頃からおもちゃじゃないと言われて育ってきた。初めて銃を使ったのは12歳の時で、おじがくれたものだった。最初はスポーツ的な感覚で趣味として使っていたが、今は保身のために持ち歩いている。銃器を持つことでとても安心できるし、逆境に陥っても自分を制御させてくれると感じている。オーランドの事件が何か自身に影響を与えたか? いや、特に何もなかった。銃乱射事件は「常態」になりつつあり、そうした事件に鈍感になってしまった。とはいえ、銃の所有については何らかの条件が付くべきだと言う考えに変わりはない。銃撤廃には反対だが。
【Tara】
女性に性転換した自分は小さい頃から他の男の子たちとは違うと感じていたので、割と早くから銃を求めていた。みんなと同じと思えたし、自分は男だと証明できるような気がしたから。つまり、周囲から受け入れてもらいたかった。いじめられたことはあったが、トランスジェンダーだからではない。単に自分が駄目な人間だったからだ。オーランドの事件には恐怖を覚えたが、ほかの銃乱射事件と同じだと感じた。トランプ政権は銃の規制緩和を主張しているが、銃を持てば事件が減るわけではない。その一方で、共和党はLGBTに対するヘイトをむき出しにしている。こんな政権下では、特に有色人種のトランスジェンダーたちは銃を持って自衛するべきだ。
【Jessi】
銃に関心を持ったのはここ数年のこと。警察官になるために、銃の正しい知識と節度を身に付けようと訓練していた。今のところは保身のためというよりも、スポーツのために使っているが。銃を所有したからといって安心や安全を手にしたとは考えていない。正しく使えば自分を守ってくれるが、危険な状況の全てを解決してくれる万能薬とは思っていない。LGBTであるために暴力を受けたことはないが、嘲笑されたことはある。高校生活は全く楽しくなかった。憲法修正第2条は今とは全く背景が異なる時代にできたものだが、それでも権利は権利だ。銃があってもなくても犯罪は起こる。オーランドの事件には震撼したが、銃に対する考えは変わらなかった。
Photographs by Blake Little
撮影:ブレイク・リトル
米シアトル生まれ。大学で写真を学び、ロサンゼルスに移り住む。80年代から、トム・クルーズやジェフ・ブリッジス、グウィネス・パルトロウなどのハリウッドスターや、コリン・パウエルなどの政治家、セレブリティーを撮影するポートレート写真家として活躍中
<本誌2018年12月04日号掲載>
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