コラム

政治とカネの問題は「ふるさと納税」式に解決しよう!(パックン)

2024年02月01日(木)19時27分

同様に、たとえ選挙に勝つのにお金じゃなく猫の毛が必要であれば、それをたくさん寄付できるペットショップや猫カフェ、猫の飼い主達が応援する政治家が当選し、猫派寄りの政策に傾くでしょう。そんなもんだ(そうなった場合、長毛種を3匹飼っている僕は頻繁に「政治献毛パーティー」に呼ばれるだろうね)。

お金でも毛でも、特定の何かを持っている人が他より政策への影響力を持つ限り、民主主義の鉄則「一人一票」が狂ってしまう。

しかし、選挙や政治活動にお金がかかるのは間違いない。では、どうすればいいのか? その答えは政治を「公金」で賄う制度だ。もちろん現存の政党交付金とは全く違う、新しい仕組みの話だ。

まず、政府が運営するオンラインサイトに、全ての政治家の名前とそれぞれの政策案を載せよう。国民が一人一人そのサイトを見て、選挙区や気になるイシュー別で検索をしながら、応援したい政治家を選択する。そうすると、政府からその政治家に公金が交付されるようにする。イメージとしては、ふるさと納税の政治家バージョンだ!

現職有利も是正できる

もちろん返礼品もないし、個人の納税額に関わらず動かせる金額が変わらないので(本来の目的から逸脱してしまった)ふるさと納税制度とは少し異なる。国民一人ずつが、同じ額で(和牛セットとかに誘惑されることもなく)本当に応援したい政治家に活動の資金を与えるだけの、いたってシンプルなシステムだ。結果として、国民が全員同じ権利を持つので、財力に関係なく政治に対して誰もが対等な影響力を持つのだ。

この新しい仕組みが機能したら、それ以外での献金を一切禁止する。そうしたら政治家は一部の富裕層や企業ではなく、より大勢の国民に応援されるように必死に頑張るでしょう。政策の偏りを正せるし、派閥や政党のしがらみも解消できるかもしれない。また、現職の議員に限らず、次の選挙を目指す候補も参加するようにすれば、今の「現職バイアス」も少し是正できるはず。さらに資金の出所も当然わかるし、その上全額の使途の報告・開示を政治家に義務もつければ透明性も保証される。

いいと思わない? 

今回の提案はなかなかなひらめきだと思っていて、全力で勧めたい。冒頭で少し大げさな話をしたが、僕は本当は人々を救済する力を持っているとそんなに思っていない。だが、このシステムが導入され政治と金の問題がきれいに解決できたら、次「あんた、メシア・コンプレックスなの?」と聞かれたとき

......イエス!  

と言うかも(救世主だけに)。

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プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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