- HOME
- コラム
- パックンのちょっとマジメな話
- 話題の「YA論文」が見落とすトランプ外交のお粗末さ
話題の「YA論文」が見落とすトランプ外交のお粗末さ
実はYA論文の中にその答えがある。「このチャレンジに対応する最も効果的なやりかたは、アメリカの同盟国とパートナーを団結させ中国の問題行為に対抗することだ」と。
ここがトランプのもっとも手痛い失敗だ。就任直後からアメリカのパートナーを突き放している。中国だけではなく、強硬な貿易交渉を日本や韓国、EU、カナダ、メキシコなどの同盟国にも持ち掛けた。日米だけではなく、日韓やNATOの軍事同盟からの離脱をほのめかした。他の加盟国の反対を押し切り、イラン核合意やパリ協定、TPPから離脱した。ロシアの復帰を要求したり、新型コロナウイルスを「チャイナウィルス」と呼ぶように求めたりしてG7の分裂を起こした。こんな味方同士の大乱戦を演出するのは、プレジデントではなく、プロレスのプロデューサーのような仕業だ。トランプは転職したのを忘れたのかな。
さらに、トランプはWTO、WHO、UNESCO、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)などの国際機関への資金提供を停止したり、離脱を発表したりしている。当然、国際社会に「真空状態」ができる。そして、その穴を埋めるのは中国だ。牽制どころか、むしろ中国の影響力拡大を助長しているようだ。例えば先日の国連人権理事会では、香港国家安全維持法に関して各国の意見が分かれた。日本やヨーロッパ諸国など27カ国が「強い懸念」を表明したのに対し、中国への「支持」を表明したのは53カ国。サウジアラビアやイラクなど、アメリカの同盟国も含めてだ。なんでアメリカは反対意見を固めて中国に対抗できなかったか? 2018年に人権理事会から離脱したからだ。
リングに入っていないと戦えないよ。プロレスプロデューサーの常識を忘れたのか?
YAさんが引用した対中政策の著者は......
アメリカの友達は離れ、トランプの「親友」は安倍さんしかない。いざというとき、一緒に戦う「戦友」は果たしているのか。YA論文もアメリカが求心力を失ったことを認める。それでも「トランプ以前の世界に戻るのか?」と自問して、Noと自答する。
あなたならどう答える?
よく首相と電話してゴルフをやる、孤立した「アメリカファースト」の大統領。
それとも、首相とビジネスライクな関係を持つ、強い味方がたくさんついている、仲間含めての「アメリカ達ファースト」の大統領。
日本にとってどちらがお得だろうか?
ちなみに、論文の勧める対中政策は「アメリカの同盟国とパートナーを団結させ中国の問題行為に対抗すること」だが、これは外交専門誌に載ったエッセイをYAさんが引用したもの。その著者は、オバマの副大統領を務めた民主党のジョー・バイデン大統領候補。ご参考までに!
あともう一つ、アメリカでのコロナ感染者は440万を、死亡者は15万人を超えていることも忘れないでおこう。
残念ながら、日本の皆さんは次期大統領を選ぶ権利はないが、願うことは自由だ。どうぞお祈りください。
<関連記事:劣勢明らかなトランプに、逆転のシナリオはあるのか?>
【話題の記事】
・新型コロナウイルス、患者の耳から見つかる
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・がんを発症の4年前に発見する血液検査
・韓国、コロナショック下でなぜかレギンスが大ヒット 一方で「TPOをわきまえろ」と論争に
2020年8月4日号(7月28日発売)は「ルポ新宿歌舞伎町 『夜の街』のリアル」特集。コロナでやり玉に挙がるホストクラブは本当に「けしからん」存在なのか――(ルポ執筆:石戸 諭) PLUS 押谷教授独占インタビュー「全国民PCRが感染の制御に役立たない理由」
トランプを再び米大統領にするのは選挙戦を撤退したはずのケネディ? 2024.09.19
トランプがバイデンに与えてしまった「必殺技」...最高裁判決で無限の権力を手中に? 2024.08.06
討論会惨敗の米民主党がここから「仮病」で大統領選に勝つ方法 2024.07.01
謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わない理由 2024.06.11
新生活の門出にパックンが贈る「ビーカーの尿、バイアグラ、厚切りジェイソン」の教訓 2024.04.04
日本で「外国人を見た目で判断する」ことの弊害が噴出中 2024.03.16