コラム

日本のコロナ対策は独特だけど、僕は希望を持ちたい(パックン)

2020年05月01日(金)13時45分

いい国でも、必要なときに国民の行動を制限する対策は取れる。では、リーダーシップの問題なのか?

安倍さんの指導力をどう評価するかは比較対象次第だ。ドナルド・トランプ米大統領と比べてみよう。

安倍さんはコロナの脅威を最初から軽視していない。トランプと違って、「アンダーコントロール」とは言わない(五輪招致のときにフクシマに言及した以外では)。

無根拠な誤報発信もしない。トランプは検査、ウェブサイト、入国制限、物流、ワクチン、薬、人工呼吸器などなどに関して事実と異なる主張を繰り返している。過去の嘘についても嘘をついている。例えば、抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンがコロナ治療に効くとトランプは主張した。嘘だが、その後その成分が入っている洗剤を飲んだ人もいた。しかも2人! 今は1人しかいないけど......。

パイオニアだから迷って当然

一方、安倍さんは、話の内容と矛盾する「3密」の記者会見を開いても、あおらず、隠さず、正しい情報をきちんと活舌悪く伝えている。

安倍さんはコロナ対策を私物化しない。トランプは国民への給付金の小切手に自分のサインを入れることにした。日本国民に給付する「アベノマスク」に安倍さんの名前が入っているが、あれは付けたくて付いたものではない。

安倍さんはWHO(世界保健機関)への資金拠出を止めていない。ロックダウン中の自治体での反政府デモをあおっていない。「大統領の机に似合わない」という理由でマスク着用を拒否していない!

小錦さんの隣にいれば痩せて見えるのと同じで、トランプと並べると、安倍さんはかなりよく映る。しかし、日本政府のコロナ対策の問題点も認めざるを得ない。休校が早かったのに、その後の対応が遅かった。検査が足りないし、その説明に一貫性がない。休業補償や給付金の方針が二転三転し救済が遅延している。全体的な行き当たりばったり感がある。仕方ないかもしれない。日本はマイウェイを切り開いているから。パイオニアは迷って当然だろう。

個人的な意見だが、僕はWHOの推奨に従い、検査の数を増やして海外の成功モデルを取り入れたほうが確実だと思う。また、経済再稼働のために今は多少の私権は犠牲にし、予防策や国民の救済を急ぐために多少の民主的議論を省いてもいいと感じる。でも僕は例外かも。こう見えても、日本人じゃないから。

日本には日本のやり方がいいかもしれないし、成功するかもしれない。今のところは感染者数も死亡者数も大国の中では最低レベルだ。もしかしたら、普段から自転車にロックをかけないこの国なら、ロックダウンしなくても安全かも。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

9月改定景気動向指数、一致指数は前月比+1.3ポイ

ビジネス

村田製が新中計、27年度売上収益2兆円 AI拡大で

ビジネス

印財閥アダニ、米起訴受け銀行や当局が投融資調査 資

ビジネス

伊銀行2位ウニクレディト、3位BPMに買収提案 約
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story