コラム

パックンが米朝首脳会談の合意内容を大胆予想!

2018年05月16日(水)13時00分

もう一つの欠陥として、米朝の合意には拉致問題の解決策は盛り込まれない可能性が高い。「誠意をもって解決に努める」のような文章は入るかもしれないが、本格的な交渉は日朝間で直接行う以外ないだろう。

いろいろな意味で不完全な合意になるはずだ。でも、それだけで拒否することは間違いだと思う。そもそも北朝鮮に対する武力行使の選択肢はない。そもそも中国は経済制裁に前向きではない。そもそも金体制の打倒をなすすべはない。こんな条件で、理想が現実になることはないだろう。

そこで「核を持ち、国際社会から追放されたならず者敵国」として北朝鮮を突っぱねておくか、「核を持たないで、国際社会に復帰し規範を守ると決めた通常国」として付き合うかという2択であれば、後者を選ぶのではないか。

妥協しないと交渉は成立しないが、妥協した瞬間、合意が完璧じゃなくなる。「核を一括放棄したことを完全に検証できる」という「完璧な」プランを目指すのはいいが、それができないときに履行可能な「良い」オプションを捨ててしまうことは実にもったいない。それこそ The perfect is the enemy of the good の悪例になってしまう。

ちょっと待って! 完璧じゃないからとイラン核合意から離脱したトランプは、北朝鮮と妥協するはずがない!

そんな見方をする人もいるが、僕はそう思わない。狂気めいた強硬姿勢を見せたあと、超融和モードにすぐ切り替わったトランプ大統領は段階的な、検証不可能な内容でもハンコを押すだろう。正直、上述ほど「良い」条件じゃなくても、すぐに合意を成立させ、勝利宣言をして、今後の選挙活動に利用すると思う。そういう意味で、「良い」を失うほど妥協しすぎないように気を付けるのも大事。トランプは完璧主義者ではなく、トランプ主義者だから。


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英企業信頼感、1月は1年ぶり低水準 事業見通しは改

ビジネス

基調物価の2%上昇に向け、緩和的な金融環境を維持=

ワールド

米運輸長官、連邦航空局の改革表明 旅客機・ヘリ衝突

ビジネス

コマツの4ー12月期、営業益2.8%増 建機販売減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story