コラム

「やっちゃだめ」を全部やっちゃうトランプ大統領

2017年05月19日(金)18時15分

もっと身近な例もある。

子供の作ったものをほめたり、周りに勧めたりするのはどの親もやりたいこと。そしてもちろんやっていいことだ、本来は。しかし、大統領となると話は違う。税金で運営している政府のウェブサイトで娘のブランドを推してはいけないし、そのブランドの取り扱いをやめたチェーン店をツイッターで批判するのはだめでしょう。しかも安全保障のブリーフィングを受けるはずの時間にそんなツィートをしているなんて、言語道断だ。

こうみると、大統領が可哀想にも思えてくるね。普通はやっていいことでも「やっちゃだめ」だとこんなに言われるなんて。自由の国の長が自由じゃないってことだね!?
 
しかも、まだまだある。
・外国政府をお客様としてビジネスをすること
・自分が率いる組織内の主要ポストに家族を起用すること
・毎週末、ゴルフをしに行くこと

これらはどれも、多くの家族企業の社長が普通にやっていることだ。やっていいよ、本来は。

・ツイッターで個人攻撃をすること
・独裁者を応援すること
・陰謀説を広めること

これらはどれも、多くの変な人が普通にやっていることだ。ちょっと変だけど、これらもやっていいよ、本来は。

【参考記事】「これでトランプを終わらせる」マイケル・ムーアが新作を製作中

変わり者社長だったころ、トランプはどれも楽しんでいたし、大したお咎めはなかった。でも、やはり「大統領」のトランプはやってはいけない。やると厳しく批判される。本当に可哀想だ。

でも、大丈夫。トランプは全部やっているんだから!

やってはいけない立場になっても、やり続けているのだ。メディアにも側近にも家族にも止められない。なんでもやり続ける大統領だ! 暴走老人というか、自由の国でトランプが一番自由な人なんだろう。

アメリカ人はアウトローが大好き。ハリウッド映画の主人公はもれなくわが道を歩む一匹狼タイプだし、トランプ政権には同じぐらいのエンターテイメント性があって、見ていて面白い。立場をわきまえない。空気を読まない。やってはいけないことをガンガンやってしまう。実にスリリングだ。見せ物として周りの人は楽しんでいればいい。本来は......。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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