コラム

コロナ危機が招いた株価バブルは2021年に終わる

2021年02月12日(金)15時00分

コロナで経済は大変なのになぜ株価が上がり続けるのか、と普通は疑問を感じるが Kim Kyung Hoon-REUTERS

<投資家の期待値によって膨れ上がり、コロナ危機の現実と乖離したバブルは、各国政府の財政出動が尽きれば崩壊する>

(本誌「コロナバブル いつ弾けるのか」特集より)

株価が上がっている。日経平均はバブル崩壊後の最高値を更新し、30年ぶりの高値となった。

NWcover210209.jpg2000年4月の日経平均構成銘柄の大幅な入れ替えにより、ずれが生じているから(概算では日経平均は2000円程度、2000年以前よりも低くなっていると言われている)、20世紀の基準では日経平均3万円を実質的には突破している。そして、まだその勢いが止まる気配はない。

この株価はバブルなのか、という問いの答えは、明らかにイエスで、問題は、いつ、どのように弾(はじ)けるか、という点に移っている。これは意外に難しく、バブルと分かっていてもすぐに弾けるのではなく、ある程度はバブルに乗っておかないと、ほかの投資家に利益を持っていかれてしまうから、バブルが続く限りは、プロの投資家ほどバブルに乗り続けるものなのだ。

リーマン・ショックが弾けた後、シティグループCEOのチャールズ・プリンス(当時)は、「音楽が鳴っているうちは、踊り続けなければならない」とその状況を描写した。

しかし、いま人々が不思議に思っているのは、経済は新型コロナウイルスの影響で大変なことになっているのに、なぜ株価が上がるのか。しかも、21世紀最高値を更新するのか、ということである。

これは、経済と株価が異なる動きをするのがおかしい、と思うのが間違っている。経済と株価は関係ない。経済がどうであろうと、株価は株価で勝手に上がるのである。

そんなばかな、と思うかもしれない。実際、エコノミストは、株価は経済を映す鏡とよく言う。株価は経済のファンダメンタルズで決まると、経済学やファイナンス理論の教科書に書いてある。そんなばかなことをいうおまえがばかだ、と言われそうだが、それは、その教科書が間違っているのである。

あるいは、現実の経済とは無関係な経済理論の世界の仮定について説明しているだけだ。あるいは、一昔前の遅れているファイナンス理論に基づき、行動ファイナンス理論を知らない人が書いた本なのだろう。

株価以上にバブルになっているものがある。それはビットコインだ。仮想通貨とか暗号資産などと呼ばれ、通貨であるかどうかは議論が分かれているが、資産であることは間違いがなく、異常な暴騰をしている。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story