コラム

日本の政党政治はこれからどうなるべきか(後編)──緑の党を作ろう

2017年10月27日(金)21時35分

政策的な主張もはっきりしている。そして、公明党は与党に入ることで、政策的な一貫性を失ったようにも見えるが、与党に入り続けることから得られる実利を優先し、可能な限り妥協する、という方針がはっきりしている。その結果、もっとも自分たちの支持者のために有効な政策を実現する成果を得たのは公明党である。軽減税率はその一例である。

選挙的には、彼らはなくてはならない票を持っている。安定した票を全国に持っているということだ。自民党は公明党の基礎票抜きには選挙を戦えないし、今回希望の党が惨敗したのは、連合の基礎票がばらばらになってしまったことで、立憲民主党は部分的に共産党の基礎票を取り込めたことが勝因となった。

だから、選挙戦術的に言えば、共産党との共闘は、政策的な整合性から難しい、という民進党の一部の人々の判断は選挙に負けてもいいから、ということであれば、正論で素晴らしいが、選挙に勝つことを最優先するのであれば、致命的な失敗であった。

現在の選挙は、組織的な基礎票をベースに浮動票をイメージ戦略でどこまで取り込むか、という闘いである。基礎票もなく、イメージも悪い民進党の有力議員は自力でがんばり続けるしかなかったが、風を求める議員たちの作り上げた人災によって、自己努力で得ていた票まで吹き飛ばされてしまった。

このような繰り返しをしていては未来はない。もし、組織的に安定的な政党を作るとすればどうしたらよいのか。

政権交代可能な政党は目指さない

第一に、浮動票には頼らないことが必要である。無党派層と呼ばれる浮動票層は気まぐれで、適当である。日本新党に入れ、小泉郵政解散に入れ、政権交代に入れ、みんなの党に入れ、維新に入れる人々である。頼ったらこちらが使い捨てられてしまう。

第二に、では基礎票を固めるしかないが、それには全国的なネットワークが必要である。しかし、それは思いつかない。私は、この30年、何がありうるか考え続けたが、ないという結論に達した。公明党や共産党は参考になるが、特殊である。同様のネットワークを今から作ることは不可能だし、代わりになるものも存在するようには見えない。何か代替案が必要である。

第三に、ローコスト運営が必要である。政党をつくる、ということはゼロからのスタートである。もちろん、野党である。だから、長い間、もしくは永遠に野党であるから、利権も組織に帰属するインセンティブも生み出すことはできない。それでも組織を持続させるためには、組織の持続にコストがかからないようにする必要がある。

第四に、そのためには、政権交代可能な政党は絶対に目指さない、という方針が必要である。日本では政権交代は望まれていない。過度に強くなった政権与党を牽制することだけが必要である。そのためには、公明党のように、少数政党として、連立政権に入るか、共産党のように、野党として一貫した主張をし続けるかである。そのためには、政権をとることを目指してはいけない。多数の候補者、小選挙区のすべての選挙区に候補者を擁立するにはコストがかかりすぎる。最初から少数政党であり続けることを前提に党を作る必要がある。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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