コラム

日本の政党政治はこれからどうなるべきか(前編)

2017年10月25日(水)17時00分

「打倒安倍」掲げて合流した希望の党の小池百合子代表と前原政治民進党代表だが(10月5日) Issei Kato-REUTERS

<大混乱の末、自民圧勝に終わった総選挙にも収穫はあった。「政策論争」「二大政党制」「政権交代」を理想と崇める日本政治の虚構を暴いたことだ>
*後編はこちら「日本の政党政治はこれからどうなるべきか(後編)──緑の党を作ろう

衆議院選挙が終わった。

これはほとんど意味のない選挙だった、といわれているが、まったく違う。

日本の間違った政党政治の終わりが来たのだ。

日本政治について語られる三つの誤りがある。そして、それは専門家ほど間違っている。メディアの政治部記者や政治学者たちがもっとも大きな誤りを犯しているが、多くの政治家自身も致命的に間違っているのだ。

第一に、政策論争は必要ない。

第二に、二大政党制は必要ない。

第三に、そもそも政権交代も必要ない。

これらのことを改めて明確に提示したのが、今回の選挙だった。

この3つのことは、私は従来から指摘してきたが、ほとんどの人には理解されなかったし、相手にもされなかった。彼らの意見は、これらの3つが日本には必要で、これらを実現するのが政治改革の目的であり、民主主義政治のゴールいや第一歩であるというものだ。

それは現実には起こりえない。日本では絶対に起こらない。そして、さらに重要なことに、それは理想論に過ぎないのではなく、誤った理想である。日本のこれまでの政治制度や政党政治のあり方に対する批判は、誤った理想に基づき議論されてきたのだ。

小池は取り巻きも「感じ悪かった」

第一に、今回の選挙結果を見れば明らかなように、政策は選挙にはまったく関係ない。誰も消費税引き上げの是非も教育支出も、そして憲法改正さえも議論しなかった。メディアは専門家や政党の政策担当者を呼んで議論させたが、有権者は全く関心がなかった。彼らに必要だったのは、安倍首相と小池都知事、どちらが信用できるか、正確に言えば、どっちか「感じの良い人か」ということだけだった。小池都知事にとって不利だったのは、本人だけでなく、その取り巻きたちが輪をかけて「感じが悪かった」ことだった。これで決定的に希望の党は敗戦した。

立憲民主党がなぜ躍進したか。

安倍政権への批判票の受け皿となったからではない。一番「感じが良かった」からである。共産党が衰退したのは、「希望の党は自民党の補完勢力」などと関係ないことばかりを言い続けたからである。希望の党というどうでもいい政党を攻撃したからで、攻撃は少なくとも自民党に向かうべきだったし、それよりも重要なことは、他の政党を攻撃だけしているのは、とっても「感じが悪かった」のである。

立憲民主党は、希望の党に苛められたことにより同情票があつまり、いじめられてもめげずに奮闘していたのが、「感じが良かった」のである。元民進党の仲間を攻撃しない、という態度が真の勝因だった。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story