軽減税率の何が問題か
庶民の味方のようなふりをして、実は低所得者に最も不利な税制 Toru Hanai-REUTERS
誰も得をしない。すべての人が損をする。だから良くない。
第一に、景気を悪くする。これほど単純に景気を悪くする増税対策もない。景気対策としては最悪である。
第二に、低所得者がもっとも損をする。当初、低所得者対策として議論が始まった軽減税率は低所得者に最も不利な増税対応策である。目的から最も遠いので最悪だ。
第三に、選挙対策としては効率的である。だから、次の選挙を勝つためには最も安易で確実な策である。となると、良いことではないが、自民党も公明党も得をするのだから、長期的に日本のためにならなくとも、合理的ではないか。そうではない。政治的にも軽減税率は自滅への道である。
これらを順番に説明しよう。
第一に、景気に対して最悪である。軽減税率とは、2%の消費税率引き上げで5.6兆円の増税に対して、その緩和策として食料品に関して1兆円の恒久減税を行うという、要は1兆円減税である。そして、最悪である理由は、1兆円減税の経済効果としては、もっとも効果が低いからである。食料品に対して減税するのは、食料品が必需品だからである。となると、減税の経済効果はゼロである。つまり、必需品へ減税しても、それで消費は増えないから、需要は増えず景気には効果ゼロである。
低所得者の食料品、というのは、もっとも増減の余地がない。これ以上減らせない。だから、痛税感が最大だから軽減するのだが、だからこそ、景気に対してはもっとも減税効果が小さく、経済政策としては最悪である。
低所得者に毎年10万円給付するほうが効果的
もちろん、食料品は高所得者も消費する。キャビアを買っても大トロの刺身を買っても、松阪牛を買っても軽減であるから、ここには経済効果があるかもしれない。しかし、これは、政策として、もっとも望んでいない効果である。金持ちの食料消費が増えること、彼らに減税の恩恵が集中すること、これは政策の意図としては最悪である。しかし、それが起こるのである。
これは、第二の点にも繋がる。低所得者対策にならない、ということである。これは様々なところで言われ尽くされているが、例えば年収200万円の層では、軽減税率による減税の恩恵は年間9000円、1500万円の層では、2万円の効果がある。要は、低所得者に9000円毎年ばらまき、年収1500万円の人々に、今後永遠に毎年2万円ばらまき続ける、ということである。低所得者対策としては、低所得者だけに毎年10万円給付を続けた方が効果的であり、しかも1兆円よりも少ない財源で実現できるのである。これが、すべての経済学者とエコノミストが望ましいとする、給付付き税額控除、というものの、もっとも雑な描写である。
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