軽減税率の何が問題か
したがって、食料品に対する軽減税率は低所得者対策としては最悪で、株価だけを釣り上げて、金持ちだけに利益をばらまくよりは若干ましだ、という程度の低所得者対策である。
しかし、景気に最悪、低所得者対策としても最も効率が悪い、ということになると、なぜ、政府はここまで軽減税率に固執したのであろうか、という疑問が沸く。アベノミクス自体には賛否が分かれた経済学者、エコノミストも、すべてが一致して、軽減税率には反対だ。さらに、誰にもメリットがなく、政治的にも、どの層にも利益をもたらさない。政治的にも、自民党の支援層である、中小企業も大反対で、どう考えても、経済的にだけでなく、政治的にも受け入れられない政策に思える。それならば、なぜ、導入することになったのか。
これは、ある種、なぞであるが、欧州では、多くの国で軽減税率が導入されている。だから、欧州がやっているのだから、日本もやれ、という議論もあるが、欧州の政策が優れているとは限らない。それどころか、ほとんどの経済政策に於いては、欧州の政策は効率が悪く、経済対策としては機能していない。実際、欧州の経済の低迷ぶりは、日本とはくらべものにならない。インボイスなどは、消費税の制度として必須で、それを導入している欧州の方が制度的に成熟していると言えるが、逆に、軽減税率を導入してしまった、と言う点で、欧州は先に誤りを犯したのである。国際機関であるIMFもOECDも軽減税率は、理論的、マクロ経済的に望ましくないとしている。
では、この謎をどう解くのか。なぜ、欧州では、非効率と分かっている軽減税率を導入してしまったのか。
答えは、痛税感を和らげる。その一点に尽きると思う。消費税率の引き上げをするにあたり、痛税感から反対が出る。低所得者から特に出る。食料品の値上がりは特に厳しい。内税方式になっていればなおのこと、価格上昇は堪える。だから、20%まで消費税率(付加価値税率)を上げるにあたって、何かが必要だった。そのときに、食料品など必需品への軽減税率は、もっとも安易に人々に呈示できるものだった。それだけのことだと思われる。新聞や書籍はそのどさくさに紛れて、政治力を発揮し、ねじ込んだのだろうが、こちらは、さらに意味が分からず、理由もケースバイケースだろう。
つまり、食料品への軽減税率は、安直な逃げなのである。
日本も状況は同じだ。
誰もが「恩恵」を受ける軽減税率は選挙にうってつけ
選挙に必要なものは低所得者対策ではない。幅広い有権者の支持が得られるかどうかだ。
低所得者対策が良いのは、それに他の人々、低所得者でない人々も同意するからである。
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