『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
理解し合うことが大事
職場というのは、特殊な空間だ。特に、日本企業の職場は定型発達者(いわゆる健常者)の巣窟のような場所である。空気を読み、ミスをせず、時間を守ってホウレンンソウを小まめに行う人間こそが優秀とされる。そうでない者は「能力不足」で「使えない人間」と見做される。
残酷な話のようにも聞こえるが、注文した料理がいつまで経っても運ばれてこないレストランと、ミスなくてきぱきと皿を運んでくれるレストランを比べた時に、どちらが繁盛するかを考えたら自明のことである。
発達障害のある人が職場で「困った人」と見られてしまうことは、決して珍しいことではない。だからこそ、私たちはお互いに特性を理解し、それぞれの人に合った接し方や伝え方を考えなくてはならない。そうすればみんなハッピーだよね、というのが現代の常識であり、本書もそうした考えに基づくものと言えるだろう。
とはいえタイトルや帯文を見る限り、この本は決して専門家向けの本ではなさそうである。著者は民間資格の産業カウンセラーを有しているとはいえ、自身のブログではスピリチュアル系の投稿もしているため、本の内容についても私は若干の不安を覚える。
だが、厳密な表現で書かれたアカデミックな専門書というのは、往々にして分かりにくく、多くの人には届かない。発達障害という用語を避けて「職場の困った人」という平易な言葉をタイトルに持ってきたのは、むしろ良かったと思う。発達障害に興味など持たないであろう定型発達者に、本書を手に取ってもらいやすくなるからだ。
この本は、発達障害を漠然としか知らない人が、職場の「困った人」との付き合い方を考えるきっかけとして読むのが適切なのではないか。
素人判断で「あいつは発達障害だ」と決めつけるのは正しくないが、あの人は発達障害かもしれないなあ、と思いながら、人付き合いのヒントを探る読み物として読めば、それなりに意義のある本なのではないかと思う。
発達障害や精神疾患の人が職場にいる場合、周囲が対応に苦慮することは現実としてあり得る。この本は、そういう人々に向けてヒントを提示するものになるかもしれない。
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