『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
動物イラストの表現は普通
まず、動物のイラストについて。たとえば発達障害当事者協会は「発達障害者を『言葉が通じない動物のようなもの』として表現していると解釈せざるを得ない」と指摘しているが、あまりに極端な解釈ではないだろうか。
本書の内容は、目次を見る限り「職場で遭遇する『困った人』にどのように対応したら良いか」を指南するものだ。
例えば、相手のくどい話を打ち切りたい時は「帰りの電車の時間があるので、今日はここで失礼します」と返答してはどうかと提案し、何度もミスを繰り返す人には「この前のミスと今回のミスで、何か違いや共通点があったかな?」と語りかけるよう呼びかけている。
発達障害は言葉が通じないどころか、むしろ言葉をうまく交わすことで良好な関係を築けると説いている。「動物扱い」はあまりにも表面的な解釈で、被害妄想的な曲解と言わざるを得ない。
また、様々な立場の人を擬人化した動物のイラストで表現することは、この本に限らず日常的によくあることだ。出版社の意図としては、職場にはさまざまな背景の人がいることを伝えるべく、多様性や他者性を表現したかったのではないか。発達障害は目に見えるものではないから、こうした表現には一定の合理性がある。
「人間を動物にたとえるな」と言うのであれば、しばしば犬にたとえられている警察官はどうなるのか。「犬のおまわりさん」は職業差別と言えるのかもしれないが、本気でそう思っている人はほとんどいないだろう。
この本の主旨は、精神疾患のある人を動物扱いすることではない。動物のイラストはかわいらしく描かれており、侮蔑的な描き方はされていない。ゴキブリなど害虫にたとえるならまだしも、この程度の表現はまったく問題ない範囲と言える。
発達障害の当事者や、当事者を支える立場の人にとっては「不快な表現」だったのかもしれないし、確かにもっと良い表現方法もあったのかもしれない。そういう人々が「不快だ」と表明することは、表現の自由の一つとも言える。
問題なのは、そこからさらに進んで差し止めや回収を訴えることだ。そうした過激な言動は表現活動に関わる人間を萎縮させ、回り回って批判をしている人自身の首を絞めることになるだろう。
ネット空間はノイジーマイノリティーの声が増幅する仕組みになっているため、世の中の平均的な世論とは乖離することがよくある。炎上した時こそ、冷静な判断が求められる。
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