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日本から喫煙できる飲食店がなくなる――かもしれない?

2017年01月27日(金)17時03分
高野智宏

 経営面での危機感については、それを裏付けるデータがある。国に先駆け、2010年4月に罰則付きの「受動喫煙防止条例」を施行した神奈川県下における、条例施行後の飲食店の経営状況だ。条例は、面積が100平方メートルを超える店舗に完全分煙または全面禁煙を義務化したものだが、その結果、条例に対応した店舗の実に4割以上で売上が減少したという(『外食産業マーケティング便覧2011(総括編)』より)。

 現在、飲食店関係者のみならず、複数の県議会から「事業者の経営を圧迫しないよう配慮を求める」などと意見書の提出を求める動きが相次いでいるが、それも地元経済の衰退化を懸念していることの表れだろう。

 一方、規制強化には国際的なアピールの意味合いもあるが、当の訪日外国人の意識には意外な一面もある。JTBグローバル・マーケティング&トラベルが行った「外国人環境客の日本に対する喫煙環境意識調査」によれば、「自国と比べて、日本の喫煙環境をどう感じましたか」という設問に対し、全体の64%が「日本の方が良い」と回答。現状の喫煙ルールでの再訪日意向を問う設問には、78%が「来たい」と答えているのだ。

 果たして、喫煙できる飲食店は本当になくなるのか。経営面での配慮を含め、より慎重な議論が求められているのかもしれない。

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