最新記事
シリーズ日本再発見

日本から喫煙できる飲食店がなくなる――かもしれない?

2017年01月27日(金)17時03分
高野智宏

受動喫煙防止対策の強化をリードするWHOとIOC

 今回の対策強化案は「東京オリンピック・パラリンピック等を機に」発案されたものだ。世界保健機構(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)が「たばこのないオリンピック」を推進していることが背景にある。

 加えて、2016年の訪日外国人数が前年比約22%増となる2400万人と、4年連続で過去最高を記録。日本は諸先進国に比べ受動喫煙防止対策が遅れているといわれるだけに、訪日外国人のさらなる増加が予想されるいま、規制強化を世界に向けてアピールするには良いタイミングだろう。

 また国内においても、年々喫煙者が減少しており、より厳格な規制を求める声があるのは事実だ。事業者の間でも、「対応はするが時間的猶予が欲しい」といった条件付き賛成の声もある。飲食業界にかぎっても、大手外食チェーンには先行して分煙に取り組んでいる企業が多い。

【参考記事】五輪で日本の喫煙環境はどう変わるのか?

「飲食店やバー業界にとって壊滅的な打撃」

 とはいうものの、「このままでは潰れる!」という訴えを無視してしまっていいものか。法案が成立した場合、もっとも強い向かい風にさらされるであろう店はどう捉えているか、現場のリアルな声を聞くべく、シガーの開発製造をはじめ、東京・銀座のシガーバー「レゼルバ」などバーのプロデュースにも携わる大越裕蔵氏に話を聞いた。

 まず、原則建物内禁煙に関しては「喫煙室などを設ければ良いとのことですが、大半が個人経営など小規模な経営であるバーにとって、経済的にも物理的にも喫煙室の設置など無理な話」と、大越氏。「法案化されれば店を畳まざるを得ないところが後を絶たないでしょう。これは飲食店やバー業界にとって壊滅的な打撃となる」と危機感を募らせた。

 続けて、禁煙によりバーという空間の存在意義が失われると、大越氏は疑問を投げかける。「うまい酒とバーテンとの会話、そしてシガーやたばこという要素でバーは成立している。そのいずれもが欠けてしまえばバーの体を成しません。職場はもちろん家庭内でも禁煙化が進む現在、バーは愛煙家にとって酒を片手に気兼ねなく煙草を愉しめるストレス発散の場所でもあります。バーが禁煙になってしまったら、愛煙家たちはどこでストレスを解消すれば良いのでしょうか」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中