技能実習制度の適正化が10年後の日本経済を潤す源泉に?
技能実習への「介護」追加で何が起こるか
このたび、前述した技能実習法の公布に関連する形で、同じく昨年11月に新たな入管法の改正案が可決、成立している。
この改正によって、技能実習生の就労期間が最大で4年にまで延長される(途中の一時帰国期間あり)ため、5年間の滞在が公認されるようになる。
当初、技能実習生の受け入れ対象は17職種だったが、現在では74職種133作業に拡大している(2016年4月現在)。その大半は、農林水産業や工業といった第1次・第2次産業に属する(だから外国人観光客の目には触れにくいのだ)。
ただ、このたびの入管法改正によって、「介護」というサービス業が技能実習の対象に新規に追加されるのは重大な変更点といえよう。
介護には作業だけでなくコミュニケーションも大いに求められるため、一定以上の日本語能力を技能実習の条件に課すことになった。さらに、介護が「外国人の行う単純労働」というイメージに繋がらないようにし、日本人の介護職員についても待遇改善の努力を損なわないようにしなければならない、との留保も付されている。
介護事業はまさに少子高齢化対策の最前線である。政府の狙いどおりにいけば、その現場へ技能実習生が入ることによって、労働力不足が解消され、日本人介護職の待遇も改善され、大勢の高齢者や障害者が安心してサービスを受けられ、ひいては数年後には技能実習生が修得した介護技術が母国で活かされるはずだ。
そうなれば、日本という国のイメージ向上へと繋がり、大勢の外国人観光客が日本を訪れるチャンスにもなりうる。
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たとえば10年後、日本社会がそのチャンスを掴みうるとすれば、そのための最初にして最大の鍵は、新しく制定された技能実習法が、あらゆる企業活動の中で遵守されることにある。
若年層の人口が減り続ける日本社会にとって、現実的に、技能実習生は労働力の貴重な源泉といえる。劣悪な労働環境を放置しておくことが得策であるはずがない。
たとえ、「日本が培ってきた技能を通じての国際貢献」との建前を前提にしても、企業の労働環境こそ、日本の技能や文化が世界各国へ広まっていく拠点なのだから、外国人にとって居心地のいい職場として整備すべき必要性は同様といえる。