最新記事
シリーズ日本再発見

和食ブームだけじゃない、日本の料理教室がアジアで快進撃の理由

2016年07月06日(水)16時53分
西山 亨

japan160706-1.jpg

現在6つの国と地域で16スタジオを運営。講師と会員とのコミュニケーションを重視しており、現地で採用した講師の育成に最も力を入れている(写真提供:ABCクッキングスタジオ)

 特徴的なのは、講師を現地で採用していることだろう。日本の社員が現地へ出向き、日本と同じサービスを提供できるようにノウハウを教え込む。しかし、国や地域によって、現地の人たちがしてもらって嬉しく感じることや親しみを覚える接客は異なるので、そこを徹底的にローカライズしていく。

「最も重視しているのは人です。スタジオでどのような時間を過ごすかという点に価値を感じてもらっているので、講師の存在はとても重要。現地の人たちをきちんと教育して、その土地の人たちに最適なサービスを提供できる環境を大切にしています」と、坂尾さん。

 会員に対する講師のコミュニケーションによって、両者の間に揺るぎない信頼関係が築かれ、これが最大の強みに結びつく。実際に「あの先生がいるから行きたい」とか「あの先生を私の友達に紹介したい」といった声も多く、こうした信頼関係が現地の人たちに受け入れられる要因になっているという。

海外展開がインバウンドなど新しい商機を生む

 ABCクッキングスタジオが海外へ進出して6年。この間で変わったことは、同社が日本の食文化を伝えてきたことで、日本の食にさらなる価値を感じる人が増えたことだろう。このことが同社にとって新しい商機を生み出す契機となった。

 例えば、2015年に海外での旗艦店として誕生したシンガポールのスタジオ。ここでは、物販コーナーが設けられ、食に関する日本の商品をPRする場としても機能している。また、京都の食材を使ったレッスンを企画すれば、受講の申し込みが殺到するなど、日本の食材に対する期待は以前よりも大きくなっている。

 一方、日本の食材を輸出したいと思っている日本の会社や自治体にとっても、貴重な機会として活用されている。実際のレッスンに食材を使ってもらい、その感想をアンケートで集計して日本へフィードバック。その情報が輸出戦略の元となる。こうした輸出促進のサポートビジネスの依頼は急激に増えているという。

 こうした取り組みをさらに発展させたのが、インバウンド向けのグリーンツーリズムである。今年2月に、ABCクッキングスタジオと農林中央金庫、農協観光、リクルートライフスタイルの4社が提携。海外からの旅行者へ向けて、日本での農業体験や旬の食材を使った調理体験を取り入れた旅行ツアーを企画するというものだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中