サンリオファンが愛する『いちご新聞』はなぜ誕生したのか...「いちごの王さま」の「ファンシーな教養主義」
「いちごの王さまのメッセージ」
まず『いちご新聞』と〈文学〉の関係を考える上で、「いちごの王さま」の存在に触れておかなければならないだろう。社長(当時)・辻信太郎の分身的存在として、「いちごの王さま」は『いちご新聞』とともに形成された。
また現在も『いちご新聞』の〈顔〉としてメッセージを発している。『いちご新聞』の中で、この「いちごの王さま」のメッセージにこそ、教養主義が色濃く表れる。そこでまず『いちご新聞』における「いちごの王さま」とはいかなる存在なのかを見ていきたい。
2021年から各地で開催されている「サンリオ展」の図録には、『いちご新聞』と「いちごの王さま」の関係がこのように紹介されている。
いちごの王様は『いちご新聞』をつくった平和の国の王様ですが、平和を願う気持ちだけは、どんな大国にも負けません。世界中を争いのない平和な世界にするために、「いちごの王さまからのメッセージを発信し続けています。」
『いちご新聞』は単にサンリオキャラクターの販促のためにあるのではなく、本来の目的は、「いちごの王さま」が「平和な世界」にするためにメッセージを発信することだという。
『いちご新聞』紙上では、「いちごの王さまのメッセージ」は『いちご新聞』の「社説」とされている。
後で触れるが、実際の『いちご新聞』の読者はサンリオのキャラクターのイラストを見ることが目的であった人も多かったようだ。
しかし『いちご新聞』の方針は、まず「いちごの王さま」からのメッセージを読者に向けて届けることだった。
そもそも「いちごの王さま」がサンリオのキャラクターとして形成されたのも『いちご新聞』の中であった。
1975年12月1日号のメッセージでは「いちご新聞を読んでいるみなさん、15号の表紙いかがでしたか。いちごの王さまとかわいらしいいちごの天使たちが、やっとみなさんの前に幻のベールをぬぎました」と語られているとおり、「いちごの王さま」のイラストが『いちご新聞』紙上ではじめてお披露目されている。