最新記事
シリーズ日本再発見

美人女給は約100年前に現れた──教養としての「夜の銀座史」

2023年04月20日(木)19時55分
小関孝子(跡見学園女子大学観光コミュニティ学部講師)

二大百貨店の進出で、銀座の歓楽街化が加速度的に進んだ

『夜の銀座史』では、上記の女給ブームに加え、明治から戦後までの女給の姿をまとめたのだが、そのなかでも関東大震災後の変化のスピードには驚かされた。

今和次郎たち「バラック装飾社」が店舗装飾を手掛けた「カフェー・キリン」が銀座2丁目にオープンしたのは震災からわずか2か月後であったし、震災から4ヵ月後の大晦日に銀座に繰り出した人びとは輝くネオンに感激した(『夜の銀座史』p68~70)。

やがて銀座に松坂屋と松屋という二大百貨店が進出すると、個人商店は百貨店との競合を避けて飲食業態や不動産業へ転向し、銀座の歓楽街化が加速度的に進むきっかけとなった。

このように、昼の銀座と夜の銀座は商業の点からみると表裏のように不可分だったのである。『夜の銀座史』で引用している資料の初出の日付にこだわったのは、それだけ店の入れ替わりが激しいからである。

ginzabook20230420pic2.jpg

ちなみに、『夜の銀座史』の表紙に描かれている銀座の街並み(上)は、1933(昭和8)年12月以降の銀座1・2丁目の風景である。

手前にある「グランド銀座」が1933(昭和8)年12月1日の開業であることがわかっている(『主婦之友』1934年2月号p205)。横に広がる紅白幕は銀座の夜の風物詩だった夜店である。銀座通りの中央に伸びる線路は、いまはなき都電の線路だ。

ネオンをともした店のなかでは、女給たちが客の談笑相手になっていたはずである。なにを飲んでいたのだろうか、チップはいくらもらったのだろうか、いやな客でなければよいが......。

風景画一枚でも想像が膨らんでいく。夜の銀座の楽しみ方はいろいろあるからおもしろい。

夜の銀座史――明治・大正・昭和を生きた女給たち
 小関孝子 著
 ミネルヴァ書房

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

【話題の記事】
「パパ活より街に立つほうが効率的に稼げる」 25歳・実家暮らしの彼女が歌舞伎町にたたずむ訳は?
銀座高級クラブのママが証言「仕事のデキない人ほどよく買っている『あるもの』」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中