日本人が「税金」に無頓着すぎる理由
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<どんな税金を払っているか、その税金は何に使われているか。例えば10月1日にはたばこ税の増税もあったが、日本人は総じて税金に対する意識があまりにも低い>
国が違えば、税制も違う。肥満防止を目的としたハンガリーの「ポテトチップス税」やロンドン中心部の渋滞緩和を目的としたイギリスの「渋滞税」。
さらに、アメリカのウェストバージニア州の、銃犯罪など凶悪犯罪の抑制を目的に花火や銃のおもちゃに対して税を課す「光るおもちゃ税」などなど、世界には知られざる、そして、なんともユニークな税制が存在している。
日本にもそんなユニークな税制があれば違ったのかもしれないが、大半のビジネスマンが各人でタックスリターン(確定申告)を行うアメリカなどと比べ、私たち日本人の税金に対する意識は総じて低い。
どんな税金を払っているか、その税金は何に使われているか――。これらをよく分かっていない日本人は多いだろう。
その理由はやはり、毎月給料から源泉徴収として天引きされ、年末にはこれまた自動的に年末調整されることで、所得税と住民税の納税が申告なしに完結してしまうからなのか。
「それが一番の理由ですが、もうひとつ大きな要因があります」と言うのは、やさか税理士法人大阪支社に所属する税理士であり、税金の仕組みを身近な例で分かりやすく解説した『あなたが払う税金はざっくり言ってこれくらい』(清文社)の著書を持つ税理士、磯山仁志氏だ。
磯山氏が続ける。
「教育です。義務教育はもちろん、高等教育においても税金に関する教育が十分になされていないことです。納税は日本人の3大義務のひとつであるにもかかわらず、教育機関で税金について学ぶ機会は非常に少ない」
「私のクライアントの中小企業の経営者であっても、『自分の役員報酬を月額20万円上げると、そんなに(払う)税金が上がるの!?』と驚かれるなど、税率はもちろんのこと、所得税の超過累進課税制度自体を理解していない方が大半ですから」
筆者自身、振り返っても確かに学校で税金の授業があった記憶もなければ、超過累進課税制度自体を知ってはいても、その税率はと聞かれれば無言にならざるを得ない。言い訳ではないが、日本人の税に関する知識は、税金や経理を専門とする人たち以外は誰もがその程度ではないだろうか。
一般の人が「税金を納めていること」を意識する瞬間と言えば、買い物時に発生する消費税や、ガソリン税、酒税、たばこ税など購入の都度、事業者に支払う間接税を支払うときが、最も可能性が高いかもしれない。
しかし、それらについても、その用途はと問われれば誰もが答えに窮するのだろうが......。