こんな素材からも和紙が出来る!? 未来に向けた日本初の和紙製グッズ
機械抄(す)き和紙製造における「抄紙(しょうし)」という工程を経て和紙になる Photo:丸重製紙企業組合
<バナナの茎や茶葉などからも和紙づくりを行ってきた岐阜の美濃和紙メーカーが、JTと協業。通常は処分されるあるものを、生まれ変わらせた>
岐阜県のほぼ中央に位置する人口約2万人の美濃市は、1300年の歴史を持つ和紙の町。
和紙問屋として栄えた町屋は今も風情ある町並みを形成し、伝統ある「美濃和紙」の中でも厳選した素材で手漉(す)きされる「本美濃紙」は、2014年にユネスコ世界無形文化遺産に登録されている。
だが美濃市は、決して歴史があるだけの町ではない。
市は2015年から、伝統技術を後世に伝えていく「美濃和紙伝承 千年プロジェクト」を開始。地元の機械抄(す)き美濃和紙メーカー、丸重製紙企業組合は「和紙づくりを通じ、持続可能な社会に向けた『再生(リジェネレーション)』を......世界に向けて発信します」と掲げる。その目は過去ではなく、未来を向いている。
実際に丸重製紙企業組合では、さまざまな原料のリサイクル、アップサイクルによる和紙製造が可能で、これまでにヒノキの皮、バナナの茎、茶葉などを素材にした和紙づくりも行ってきた。いわば、SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた取り組みだ。
卓上カレンダーとA4ファイル、素材は葉たばこの幹
このたび、丸重製紙企業組合とJT(日本たばこ産業)岐阜支社、JT熊本合志(西日本原料本部および原料製造センター)がタッグを組み、ユニークなグッズを開発・製造した。美濃和紙製の卓上カレンダーとA4ファイル(いずれも非売品)。
素材は、葉たばこの幹だ。
喫煙の用途に使われるたばこは、ナス科の植物「葉たばこ」の葉から作られる。葉たばこは約6カ月で高さ120センチ以上にまで生長し、大きいもので長さが約70センチ、幅が約30センチの葉を20枚ほどつける。この葉を乾かしたものが原料になる。
では、残った幹をどうするか。幹は通常、たばこ圃地外に搬出後、堆肥製造に用いられることもあるが、焼却処分されることもある。葉たばこ耕作による環境負荷を低減していくことは、JTにとって対応すべき課題の一つになっている。
JTは国際NGOのCDPから、気候変動と水セキュリティへの対応と戦略において最高評価を3年連続で受ける(昨年12月)など、SDGsにも積極的に取り組んできた企業だ。葉たばこの幹を活用できないかと考え、昨年6月、丸重製紙企業組合との協業をスタート。アイデアを出し合い、日本で初めての、葉たばこの幹を活用した紙製品が完成した。