最新記事
シリーズ日本再発見

こんな素材からも和紙が出来る!? 未来に向けた日本初の和紙製グッズ

2022年09月12日(月)16時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
美濃和紙の製造

機械抄(す)き和紙製造における「抄紙(しょうし)」という工程を経て和紙になる Photo:丸重製紙企業組合

<バナナの茎や茶葉などからも和紙づくりを行ってきた岐阜の美濃和紙メーカーが、JTと協業。通常は処分されるあるものを、生まれ変わらせた>

岐阜県のほぼ中央に位置する人口約2万人の美濃市は、1300年の歴史を持つ和紙の町。

和紙問屋として栄えた町屋は今も風情ある町並みを形成し、伝統ある「美濃和紙」の中でも厳選した素材で手漉(す)きされる「本美濃紙」は、2014年にユネスコ世界無形文化遺産に登録されている。

だが美濃市は、決して歴史があるだけの町ではない。

市は2015年から、伝統技術を後世に伝えていく「美濃和紙伝承 千年プロジェクト」を開始。地元の機械抄(す)き美濃和紙メーカー、丸重製紙企業組合は「和紙づくりを通じ、持続可能な社会に向けた『再生(リジェネレーション)』を......世界に向けて発信します」と掲げる。その目は過去ではなく、未来を向いている。

実際に丸重製紙企業組合では、さまざまな原料のリサイクル、アップサイクルによる和紙製造が可能で、これまでにヒノキの皮、バナナの茎、茶葉などを素材にした和紙づくりも行ってきた。いわば、SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた取り組みだ。

卓上カレンダーとA4ファイル、素材は葉たばこの幹

このたび、丸重製紙企業組合とJT(日本たばこ産業)岐阜支社、JT熊本合志(西日本原料本部および原料製造センター)がタッグを組み、ユニークなグッズを開発・製造した。美濃和紙製の卓上カレンダーとA4ファイル(いずれも非売品)。

素材は、葉たばこの幹だ。

sdgswashi202209-pic2.jpgsdgswashi202209-pic3.jpg

葉たばこの幹から製作した卓上カレンダー(上)とA4ファイル。カレンダーでは岐阜県の名所も紹介(いずれも非売品) Photos: Newsweek Japan

喫煙の用途に使われるたばこは、ナス科の植物「葉たばこ」の葉から作られる。葉たばこは約6カ月で高さ120センチ以上にまで生長し、大きいもので長さが約70センチ、幅が約30センチの葉を20枚ほどつける。この葉を乾かしたものが原料になる。

では、残った幹をどうするか。幹は通常、たばこ圃地外に搬出後、堆肥製造に用いられることもあるが、焼却処分されることもある。葉たばこ耕作による環境負荷を低減していくことは、JTにとって対応すべき課題の一つになっている。

JTは国際NGOのCDPから、気候変動と水セキュリティへの対応と戦略において最高評価を3年連続で受ける(昨年12月)など、SDGsにも積極的に取り組んできた企業だ。葉たばこの幹を活用できないかと考え、昨年6月、丸重製紙企業組合との協業をスタート。アイデアを出し合い、日本で初めての、葉たばこの幹を活用した紙製品が完成した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中