イタリアで日本文学ブーム、人気はエンタメ小説 背景にあの70年代アニメの存在
最後に、新型コロナウイルス流行で大変だったイタリアに暮らすスマレさんに、出版事情に変化があったかを尋ねた。
「最初の政府の指令で、数カ月、書店も含めて、全部のお店を閉めることになりました。書店と出版社にとって大変な事態で、パニック同然でした。一方、Amazonには商品の注文が殺到し、発送が追いつかず困っていたそうです。どうなるかとみんなが心配していましたが......その後、幸いにも本屋が再開し、売上のデータが届いたとき、驚いたことにとても良かったんです。イタリア人は、レストラン、映画館、劇場、コンサート、サッカー場に行けなくなり、無理やり家に閉じこもり、そのような娯楽は楽しめなかった。結果として、気晴らしに小説を読む人が増えたようです。今も出版事情はいいと思います」
海外では、本が刊行されると著者を招いてのオーサー・ツアーなど文芸イベントを開催することが多いが、もちろん現在は自粛傾向である。はやく平穏な日常が戻り、両国の作家や出版関係者たちが交流できる日が待ち遠しい。6月にイタリア・リンダウ社から日本文化にまつわるエッセイ集『知られざる日本への旅』(『Viaggio Nel Giappone Sconosciuto』)を出したばかりのスマレさんもそう願っている。
(取材・文:栂井理恵/アップルシード・エージェンシー)
マッシモ・スマレ(Massimo Soumare')
1968年、イタリア、トリノ生まれの翻訳家、作家、監修者、エッセイスト、日本研究者。日本人の近現代作家の作品を数多くイタリア語に翻訳。作家として、作品が中国、日本、スペイン、スコットランド、アメリカでも翻訳出版された。2016年には、短編2作により、第24回Il prione国際文学賞及びMarguerite Yourcenar国際文学賞のファイナリストに選ばれる。また1編のエッセイにより、2016年Mario Soldatiコンクールのエッセイ・ジャーナリズム評論部門においてもファイナリストに選出された。トリノ市商工会議所日本語通訳・翻訳者、CentrOrienteセンター及びUniversita'Popolare di Torino日本語講師。
『知られざる日本への旅』
マッシモ・スマレ[著]
リンダウ(邦訳なし)
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※作家・柳美里さんを「日本人作家」と誤って表記した箇所がございました。正しくは韓国国籍であり、本記事では「日本の作家」「日本文学の書き手」という表現に修正致しました。お詫び申し上げます(2021年6月29日13時45分)
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