ラグビーW杯で考えさせられる、日本の「おもてなし力」
10月6日、ナミビアとの試合を前に「ハカ」を披露するニュージーランド代表の「オールブラックス」(東京スタジアム) Matthew Childs-REUTERS
<各国から訪れるラグビーファンたちを、どのようにもてなすか。組織委員会や各試合会場での工夫と努力は、来年の東京五輪に向けても参考になるかもしれない>
9月20日に開幕した、アジア初開催の「ラグビー ワールドカップ 2019 日本大会」。北海道から九州に及ぶ12地域の試合会場で世界最高峰の戦いが繰り広げられ、日本が世界ランク2位のアイルランドを破る「静岡の衝撃(Shock of Shizuoka)」を実現するなど、大変な盛り上がりとなっている。
そんななか、試合内容以上に各国の選手やメディアから称賛されているのが、出場国チームに対する「おもてなし」だ。
事前キャンプ地の千葉県柏市入りしたニュージーランド代表「オールブラックス」に対し、地元の子供たちが、同チームが試合前に披露する伝統的な踊り「ハカ」で歓迎。北九州入りしたウェールズ代表には、地元の少女たちから同国の聖歌「カロン・ラン」の合唱が贈られた。いずれも各国で報道され、大きな話題となっている。
そんなおもてなしの数々と試合会場での盛り上がりに、オールブラックスを筆頭に各国チームが試合後、観客席に向かって日本式のお辞儀で感謝を示し、また、フランス、ナミビア、イタリアの選手は、試合後にロッカールームを清掃しているという(日本人のおもてなしに対する返礼と受け止められている)。
もちろん、おもてなしの相手は各国の代表チームだけではない。大会期間中は40万人とも50万人とも、それ以上とも見込まれる数の外国人が日本を訪れる。彼らをどうもてなすかについて、関係者は心を砕き準備を進めてきた。実際、来年には東京オリンピック・パラリンピック開催も控えており、日本の「おもてなし力」が今、試されていると言っていいかもしれない。
何しろラグビーW杯は、東京を中心としたエリアに限定される東京五輪と違って、前述のように日本の各地で試合が開催される。また、1カ月半と開催期間が長く、参加国はヨーロッパやオセアニアが中心ということもあって、裕福なラグビーファンが多く来日して長期滞在するため、経済効果が大きいとも試算されていた。
そこで大会組織委員会をはじめ、試合会場となる競技場を有する各自治体も実行委員会を結成し、訪日外国人客への多彩なおもてなし企画を実施している。
外国語スキルを必須条件にせず、多くのボランティアを集めた
その筆頭が、世界中のラグビーファンとの最前線に立つボランティアの存在だろう。組織委員会は昨春、全国12の開催都市で活動する約1万人のボランティアを募集。しかし意外なことに、応募要件に書かれたのは「日本語で読み書き・日常会話が可能な方」で、外国語のスキルは必須条件ではなかった。どういうことか。