ラグビーW杯で考えさせられる、日本の「おもてなし力」
「必須要件としていませんが、英語、フランス語、スペイン語など、さまざまな言語の語学力をお持ちの方々に参加いただいています」と言うのは、ラグビーワールドカップ2019組織委員会の広報担当、岡田勇人さんだ。
「総数は12会場合計で約1万3000人。10代〜80代の幅広い年齢層で、性別もバランスよく採用させていただきました。また、応募要件は日本語でのコミュニケーションが可能な方で、日本人とはしていません。そのため、海外の方にも250人ほど参加いただいています」
なるほど、ボランティアの活動は外国人のサポートに限らない。もし英語力を必須としていたら、1万3000人もの人に参加してもらうのは不可能だったに違いない。また、「各会場のインフォメーションや各国メディアの対応には、多言語対応スタッフを重点的に配置しています」(岡田さん)と、適材適所の配置は怠りないようだ。
そうして迎えたW杯の開幕だが、早々にSNSなどで大きな話題となったのが、会場への飲食物持ち込み禁止問題だった。9月21日、開幕戦の日本対ロシアが行われた東京都調布市の東京スタジアム(味の素スタジアム)では、試合開始1時間前には早くも大半の飲食ブースでフード類が売り切れ、長蛇の列から怒号が飛び交っていたという。
しかし、そんなトラブルに組織委員会は迅速に対応。個人が消費できる量に限り食べ物の持ち込みを解禁し、飲み物に関してもビンや缶はグラウンドへの投げ込みの危険もあるため引き続き持ち込みは禁止だが、水筒は容認と方針を転換。23日には実施され、以降は目立った問題も起きていない。
地元の名産やインバウンド向けメニューで、好評を得た釜石
実際、9月25日にフィジー対ウルグアイ戦が行われた釜石鵜住居復興スタジアム(岩手県釜石市)でも、問題は発生しなかったようだ。「スタジアムの観客やファンゾーンでも、そうしたことはありませんでした」と、岩手県文化スポーツ部の主任で、ラグビーワールドカップ2019推進室の湯田和也さんは言う。
このスタジアムでは、とりわけ満足度が高かったかもしれない。テントやキッチンカーなど、実に42もの飲食ブースが出店。地元の飲食店や団体から岩手を中心とする東北の名産品や名物料理などが販売された。なかには、出場国から訪れる外国人客を意識したメニューも考案され、発売されたという。
「インバウンド向けメニューとしてフィッシュアンドチップスを。出場国のウルグアイを意識した南米の肉料理、シュラスコも人気でした。また、ファンゾーンでは岩手産のお米を使ってフィジーのライムライスおむすびと、ウルグアイ産のキャビアを具にしたおむすび各100個をふるまい、大好評でした」(湯田さん)