最新記事
シリーズ日本再発見

平成の若者「〇〇離れ」と、メーカーの「好消費」開発

2018年11月01日(木)11時30分
高野智宏

そして、たばこといえば、昨今の話題は加熱式たばこに尽きるだろう。米フィリップ・モリス・インターナショナルのIQOS(アイコス)、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコのglo(グロー)、そして日本たばこ産業(JT)からはPloom TECH(プルーム・テック)が市場に投入され、現在、三者間で苛烈な競争が繰り広げられている。

その結果、JTの推計によれば、たばこ総市場に占める加熱式たばこの割合は、昨年の12%から20%へ急上昇。2022年には30%を超える可能性があると試算している。たばこに対する若者世代の「嫌消費」の理由のひとつがそのにおいだとすれば、煙が出ず、においが紙巻きたばこより断然少ない加熱式たばこが、消費を上向かせられるかもしれない。

そもそも、たばこを取り巻く環境はある意味で平成を通じて「よくなってきた」とも言える。というのも、かつては電車の駅でも普通に吸われるほどだったが、ビル内喫煙室や屋外喫煙所の整備、喫煙マナーに関する広報活動と、喫煙者と非喫煙者の「共存」に向けた取り組みが進められてきたからだ。

加えて言えば、たばこ各社にとっては、加熱式たばこのグローバル戦略がある。現在、日本では加熱式たばこ(たばこ葉を熱した蒸気を吸引する方式)が主流であるのに対し、欧米ではたばこ葉ではなく、ニコチンを含む液体を加熱することで発生する蒸気を楽しむ、いわゆるVape、E-Vaper(電子たばこ)が人気だ。しかし、市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルの予測によれば「世界で今後2年、電子たばこより加熱式たばこのほうが成長率が高い」のだ。

実際、アイコスはすでに世界25カ国以上で販売されているし、においが少ないだけでなくデバイスの掃除が必要ないといったアドバンテージを持つJTのプルーム・テックも、スイスに次いでアメリカ、カナダの一部地域でも販売を開始と、世界進出を果たしている。一方、訪日旅行客が日本の空港免税店で日本の加熱式たばこを買い求める姿は、すでに現実のものとなっている。

次の「リオ(五輪)世代」が消費低迷に悩む業界を救う?

こうした各業界の取り組みによる明るい兆しに加え、世代的にも大きな変化が訪れていると松田氏は語る。注目すべきは現在10代後半~20代中盤の、例えば、水泳の池江璃花子選手や野球の大谷翔平選手を代表とする「リオ(五輪)世代」だ。

「脱ゆとり教育世代であり、アベノミクス世代でもある彼らは、仲間と何かをやり遂げよう、夢を実現しようという意識も強く、また、就活もそれほど苛烈ではないため、自己肯定感が高い。そうした思考が消費も前向きに捉えるのではないでしょうか」

現在の景気拡大が来年1月まで続けば、1960~75年の「いざなぎ景気」を越え、戦後最長になる。酒・たばこ・車のみならず、消費低迷に悩む多くの業界を救うのは、前向きなマインドを持つこの「リオ世代」の台頭と、景気拡大の波に庶民の実感が伴なっていくことなのかもしれない。

japan_banner500-season2.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中