居酒屋不況の勝ち組「鳥貴族」のブレない信念
特徴的な黄色と赤の看板。このように、1階ではなく、家賃の安い空中階に出店することも多い 写真提供:鳥貴族(すべて)
<低調続きの日本の居酒屋業界にあって、急成長を遂げている「鳥貴族」。その強さはどこから来るのか>
日本フードサービス協会によれば、2016年の外食産業市場はファストフードを筆頭に業界全体が好調だった。しかし、「パブレストラン/居酒屋」だけは売上高が前年比92.8%と、実に8年連続して前年を下回っている。
そんな低調続きの居酒屋業界にあって、2011~2016年の5年間で売上高は約3倍、営業利益率は約10倍とまさしく急成長を遂げているのが、大阪を発祥とする「鳥貴族」だ。黄色ベースに象形文字のような店名を赤文字で描いた、印象的な看板を目にしたことがある読者も多いのではないか。
鳥貴族は、一流ホテルのイタリアンレストラン出身の大倉忠司がさる焼き鳥店でナンバー2として経営や多店舗展開を学んだ後、1985年に東大阪市で創業した焼き鳥専門の居酒屋チェーン。関西、東海、関東のみで展開し、5月末現在の店舗数は、直営店とフランチャイズチェーン店の合計で541店舗と、業界でいま最も勢いのある企業だ。
居酒屋不況のなか、なぜ鳥貴族は勝ち続けられるのか。
鳥貴族といえば、フード・ドリンクのすべてが280円(税別)という「280円均一」の料金形態が代名詞だ。ラインナップも多彩で、多くのメニューで280円以上の価値と満足感を感じさせる。
「これは、大倉が創業翌年より始めた250円均一という料金形態に端を発し、消費税が導入された1989年に280円へ値上げして以降、28年にわたり守り続けている、弊社のこだわりでありチャレンジなのです」とは、営業を統括する取締役の山下陽氏だ。
なぜ均一料金なのか。それは、大倉が創業前に通ったある炉端焼き屋が均一価格で高品質の料理を提供していたことに感動。自らもその感動を世の中に提供しようと、生ビールを300円以下で提供する店が少なかった当時、インパクトも考慮して250円に決め、均一料金を始めたからだという。
料理により原価率の差があるとはいえ、決して利幅が大きくはない、薄利多売の商売だ。だからこそ鳥貴族は、コスト削減を徹底してきた。「食材の仕入れ方法はもちろん、出店先も家賃の安い空中階や地下、また広さも60~70席を確保できる40坪程度の店舗を中心とし、それは今も変わりません」と、山下氏は言う。
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低価格・均一料金の「居酒屋戦争」を勝ち抜く
それまで関西を中心に展開していた鳥貴族が、頭角を現し始めたのは10年ほど前のこと。意外や外食産業にも大きなダメージを与えた2008年のリーマンショックがその引き金となった。「280円均一が不況に強かった。280円にして質の高い料理が食べられるという、コストパフォーマンスの高さも評価いただいたと思います」