最新記事
シリーズ日本再発見

夏場は6時間待ちも! 日本で今「かき氷」がブームの理由

2017年05月31日(水)13時30分
廣川淳哉

38年ぶりに復刻した家庭用「きょろちゃん」

調理家電メーカーのタイガー魔法瓶は、2016年、家庭用の氷削り器「きょろちゃん」を38年ぶりに復刻し販売した。発売からわずか3カ月で、2016年度の販売計画を達成するほどの売れ行きだったという。復刻の理由は、「今は手に入れられないのでしょうか?」という問い合わせがあったことがきっかけだとか。

かき氷人気について尋ねたところ、同社ソリューショングループ宣伝広報チームの結城咲さんは「これまでもかき氷は日本人に親しみのある食べ物でしたが、韓国や台湾などからフルーツをトッピングした見た目のかわいいものが入ってきたことで、インスタグラムなどの"SNS映えするおしゃれなスイーツ"として新たに見直されたことが理由ではないでしょうか」と、やはりSNS受けを人気の理由に挙げた。

japan170531-4.jpg

きょろちゃんは、熊の形をした家庭用氷削り器。昨年、38年ぶりに復刻し、タイガー魔法瓶のオンラインストアなどで販売。氷を削るハンドルを回すと目が左右に動くのが特徴。http://tigerkyoro.jp/(きょろちゃん特設サイト)

次に話を聞いたのが、日本かき氷協会の小池隆介代表だ。同協会は「かき氷コレクション」という催しを主催するなど、国内のかき氷の発展に寄与してきた団体である。

小池代表はかき氷店に行列が絶えない理由を、「店それぞれに色や形のバリエーションがあって、写真を見るだけでも楽しい」と語る。写真映えすることに加え、「かき氷は作るのにも、食べるにも時間がかかる。テイクアウトできず、その場でしか食べられない」と人気の要因を指摘する。他のスイーツにあまりない「体験型」としての魅力もあるということだ。

japan170531-5.jpg

日本かき氷協会では、全国のかき氷店を紹介する冊子「かきごおりすと」を発行。vol.1に掲載したのは約45店舗だったが、5冊目のvol.5では約190店舗を掲載。掲載数の増加からも、かき氷ブームが伺える。http://kakigoori.or.jp/(日本かき氷協会) Photo:廣川淳哉

小池代表によれば、現在、かき氷には第三次ブームが訪れていると言う。第一次ブームは、甘味処や和菓子店がかき氷を出していた古き良き時代。和菓子屋の売り上げは夏に落ちる傾向にあるため、かき氷がそれを補う存在となっていた。

第二次ブームは、たい焼きや今川焼きなどを扱う店舗や、祭りの屋台のような店舗がかき氷を扱うようになった頃。かき氷の裾野が大きく広がった時代だ。その次にやって来たのが、第三次かき氷ブームだ。

【参考記事】クラフトビールの「第3次」ブームが、これまでとは違う点

小池代表が「老舗ながらかき氷ブームを牽引してきた、ぜひ知ってもらいたい店のひとつ」と教えてくれたのが、東京・目白にある「志むら」だ。夏場になると、3台あるかき氷器をフル稼働させても、3~4時間待つこともあるというこの店もまた、押しも押されもせぬ人気店。ここもやはり、天然氷を扱っている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中